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フラワービレッジ倉渕生産組合理事長 近藤 龍良さん(倉渕村水沼)

【略歴】愛知県出身。商社勤務の後、86年に家族で倉渕村に移住し農場を開設。フラワービレッジ倉渕生産組合理事長、NPO法人・日本園芸福祉普及協会専務理事。

倉渕村での実証活動


◎園芸福祉の里に期待

 昨年十月から十一月にかけて、倉渕村フラワービレッジ倉渕農場を中心に園芸活動や自然体験を通じて心身の健康度を調査する「健康増進拠点づくり事業」が実施されました。

 これは昨年から実施されている「健康増進法・健康日本21」に沿ったモデル事業で、生活習慣病や成人病などの予防を目的として厚生労働省をはじめ、農林水産省、国土交通省、環境省など五省庁連携の事業として行われたものです。ここでは主に県内に居住する人たち七十五人を対象に、二泊三日の倉渕村での自然生活の体験を経て、健康状態の実証調査としてまとめられました。

 主な活動の内容としては、園芸作業やガーデニング体験のほか、森林浴やウオーキング、温泉入浴、合唱をはじめ小栗上野介由来の東善寺での早朝座禅など、倉渕村の自然や歴史を堪能するプログラムが組まれました。特に食事は地産地消の趣旨から、地域でとれる野菜や穀物、ヤマメやイワナ、イノシシの肉など、日ごろ都会では味わう機会の少ないものを用意しました。

 また、一日数回にわたり血圧、脈拍、酸素飽和度などの測定や事前、事後調査として鈴木庄亮群大名誉教授が開発した健康調査票を使い、活動による健康度の変化調査が行われました。その調査結果から、今回の活動参加によって、心身に良好な影響をもたらすことが数量的に明らかにされました。改善傾向が見られた参加者は57%。また、37%の人に血圧降下の効果があり、全体としても、倉渕村における自然の中での園芸活動は、心身の健康増進に大いに効果のあることが実証されました。

 花や野菜を育てて心身の健康を図るという園芸福祉の思想や技術にここ数年来、社会的に大きな関心が集まってきています。植物の持つ自然治癒力や、園芸作業を通じたリハビリとして作業療法などに活用されていますが、障害のある人への治療だけではなく、園芸作業を通じて健康増進につながるものが園芸福祉といわれるものです。

 また、その効果の範囲も広く、地域づくりや花いっぱい運動、公園づくり、また、農業や造園、植木ビジネスにも生かされています。特に、障害のある人たちの職業や職業訓練に有効な事業展開として、既に欧米では病院や福祉施設などで活発に展開されています。

 園芸福祉を推進する特定非営利活動法人・日本園芸福祉普及協会(理事長・進士五十八東京農大学長)では、園芸福祉を通じて健康増進を図る拠点として「園芸福祉の里」を全国各所に置き、活動を開始する計画です。その試行モデルとして、倉渕村で行われた実証活動の結果は、その拠点づくりに大いに期待できるものと考えています。

(上毛新聞 2004年11月20日掲載)