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陶芸家・俳人 木暮 陶句郎さん(伊香保町伊香保)

【略歴】創価大卒。竹久夢二伊香保記念館に10年間勤務後、陶芸と俳句を志す。陶芸で日展入選。俳句で日本伝統俳句協会賞受賞。伊香保焼主宰。NHK学園俳句講師。

お年寄りから学ぶ


◎若者からアプローチを

 高齢者の文化・スポーツの祭典、第十七回「ねんりんピックぐんま」が先月十六日から十九日までの四日間、県内各地で盛大に開催されました。長寿社会であるわが国の象徴ともいえるこのイベントは、各都道府県持ち回りで回を重ねるごとに内容が充実してきているといいます。そして、六十歳以上の高齢者といわれる方々のパワーと向上心には、目を見張るものがあります。もしかすると、今の日本では一番元気な世代なのかもしれません。

 私が高齢者の方々と多くのかかわりを持つようになったのは、俳句を始めてからではないかと思います。ある統計によると、俳人の平均年齢は七十歳を超えているそうです。年齢分布は逆三角形の上に、低い山を乗せたようなグラフで表すことができます。句会に出れば、いつも私が最年少。孫のようにかわいがられました。そんなこともあって、高齢者の方々の俳句文学に向ける真摯(しんし)な姿勢と間近にふれ合う機会を得ることができました。

 また、自然と人間のかかわりを詠む俳句の素晴らしさ、楽しさを教えてくださったのも高齢者の俳人の皆さんでした。そのおかげで、私は俳句の世界にすっかりのめり込んでしまったのです。

 今の若者は俳句に限らず、お年寄りからもっと積極的に多くのことを学ぶべきだと思います。そうすれば世代間の交流も地域文化も、より活性化していくのではないでしょうか。その第一歩は若者からのアプローチにあります。高齢者が熱心に取り組んでいることに興味を持ち、質問することから始めてみてはいかがでしょう。

 俳句歴十年に足をかけた私のところに、ある日、一通の手紙が届きました。NHK学園俳句講座からです。入門の誘いかと思い封を切ると、何と俳句添削講師の依頼状が入っていました。最初はちゅうちょいたしましたが、今までの恩返しと考え、思い切って引き受けることにしました。NHK学園から一度に約二十通のリポートが送られてきます。一通に三句から四句の俳句と作品の背景が書かれていて、それらを赤ペンで添削してコメントと評価をつけ、総評を書き込む仕事です。

 受講者のほとんどが高齢者であることは言うまでもありませんが、その文字からは真剣さが伝わってくるのです。また、リポート用紙には「あなたの声」という通信欄があり、さまざまな声が寄せられてきます。「喜寿を迎えた私ですが、俳句を始めて生活に張りが出てきました。外へ出ることが楽しみになりました」とか「自然をより深く見つめることができるようになり、心のゆとりにつながっている」などの声に接するとき、やはり感動してしまいます。

 俳句という日本独特の文学が人の心を潤し、癒やしてくれることが実感として伝わってきます。高浜虚子の言う「極楽の文学」のゆえんかもしれません。この添削講師を通して、また、俳句を通して多くの高齢者の方々と心のふれ合いができる幸せに感謝しつつ、与えられた仕事を精いっぱいやっていきたいと思います。

(上毛新聞 2004年11月14日掲載)