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◎真の心を取り戻そう 毎日のように報道される凶悪犯罪のニュース、中でも青少年の犯罪が増加している。低年齢化の現状を見るとき、日本の将来を思うのは私一人ではないと思う。 原因については、道徳心の欠如、教育の在り方、社会構造の責任などと、いろいろ論評されている。一向に改善されず、ますます増加の一途をたどる。学校では生命の大切さを、事あるごとに指導しているようだが、陰惨極まる凶悪な犯罪が行われるのは何ゆえであろうか。 昔も、いじめや暴力ざたが皆無だったといえないが、新聞のニュースになるような事件は少なかったし、貧しさゆえに学校に行けなかった児童は大勢いても、登校拒否することはなかった。 豊かな経済と恵まれた教育制度の中での登校拒否や犯罪の増加の原因は何か。根本的な解決策が早急に求められており、大いに議論すべきである。 国は少年法の改正で、十四歳以上の刑事責任を取らせるなどの対応だけで万全といえるだろうか。 私の少年時代は、戦後の食糧難であった。まともな弁当も学校に持っていけなかった。三度の食事にも事欠く時代で、犯罪の要素は十分にあったが、道徳心は学校教育だけでなく、地域社会が日常的に教育していたように思う。他人の子供でも差別なく叱しかったり、時には体罰も容赦しなかった。上級生の中には必ず、がき大将がおり、子供社会をまとめていた。事の善しあしや、上下の問題、社会のしきたりなど、遊びの中から学んだものである。そういった伝統的な社会が構築されたのは、日本民族の宗教的な要素が影響したのではないかと思う。 わが国は、世界に類をみない宗教的観念を持っている。古代より大自然のすべてに神が宿ると信じられてきた。森羅万象が神であり、これらの神々が人に命を与え、さまざまな姿に変えて人を守り、正しい道に導き、四季の恵みを与えたと、はるか五千年も昔から信じられてきた。 神仏共存の姿こそが、日本独特の宗教である。異教徒であっても対立することなく、平和的に共存共生しているのも日本ならではの姿である。耕地の鎮守様のお祭りには、村内の子供全員が村道を掃き清め、祭りの手伝いをしたものである。子供たちが自主的に参加し、それが伝統でもあった。お坊さんの説教で、現世で人をだましたり、悪事を働くと、餓鬼道(がきどう)に追いやられ、死んだ後も苦しまなくてはならない。善行した人は極楽往生できる―という話などは、子供心にも興味を持って素直に信じたものであった。 世界一の経済大国になったが、振り返ってみると、犯罪大国にもなっていた。古きよき時代という言葉もあるが、貧しくとも平和で犯罪のないよき時代に戻りたいものである。 困った時の神だのみでなく、今こそ日本人の真の心を取り戻すことが必要であり、そのことが非行の芽を摘む一助になるものと確信する。 (上毛新聞 2004年11月11日掲載) |