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専門技術員(県担い手支援課) 清水 千鶴さん(藤岡市鮎川)

【略歴】藤岡女子高、群馬女子短大卒。県生活改良普及員として各改良普及センター勤務を経て現在、県農業局担い手支援課勤務。途上国支援交流も実施。

農村女性起業


◎都会におふくろの味を

 今日の若い世代の食生活は、ライフスタイルや家族形態の多様化に伴い、家庭料理から外食産業への依存率が高くなるとともに、子供や大人、高齢者に至っても、食事を一人でとる「孤食」傾向にあります。また、その外食産業が扱っている食材の多くは輸入品であり、フードマイレージや食資源の浪費傾向等、食におけるさまざまな問題が生じています。

 一方で「食の安全・安心」が国民的課題として、毎日のようにマスコミに取り上げられ、「スローフード」や「地産地消」運動についても紙面を飾っています。

 県内には女性が主体となって、農産加工や直売所、農家レストランなど地域農産物や農村資源を生かした活動、いわゆる「農村女性起業」活動が盛んに行われており、近年、注目を浴びてきました。昨年度の県(担い手支援課)の農村女性起業調査結果では、個人と集団を合わせて二百三十五起業あり、中でも農産加工活動が圧倒的に多いのです。

 農村では昔から、四季折々の農産物が食卓を飾り、食べきれなければ保存目的で加工し、珍しい時期にそれを味わったり、客へのもてなしに使ってきました。農家の方は、長年培ってきた技術を生かし、豊かな農村環境の中で育てられた農産物を使って幾十もの加工品を生み出してきました。

 日本で米の減反政策が始まったのは、今から三十年以上も前のことで、そのころから農村女性は転作大豆と米を使った手づくりみそに力を入れ、減収分を加工品の販売によって現金収入を得る道を探り始めました。

 これが農村女性起業の始まりで、そのほか、野菜や果物、山菜などの加工品を販売する活動が県内各地で展開されてきました。今までシャドーワークであった加工品を直売したら、手づくり、おふくろの味を求める消費者に支持され、その数を増やしてきました。つまり、農村女性起業は必然的に生まれたといえます。

 先月、有志により「ぐんま女性アグリ起業ネットワーク会議」が設立され、きょう四日、東京・新宿駅西口で「群馬のかあちゃんの天下一品フェア in Tokyo」を開催することになりました。都会の消費者に、群馬のおふくろの味がどう映るでしょうか。

 都会では、二十四時間対応型のレストランや食専門店が花盛りですが、「孤食」が基本単位。その場で食べても持ち帰りでもよし、両方を兼ねた食スタイルが主流となってきたのが分かります。カップスープ専門店もその一つですが、例えば、おきりこみのカップスープがメニューに上ってもいいのではないでしょうか。群馬のおきりこみやおやきも、売る場所や売り方(スタイル)など総合的にデザインしていけば、都会人にも受け入れられるのではないでしょうか。

 これからも農村女性起業は、働く若い世代の食の応援団として、お母さんの味、家庭の味代行業として、活躍し続けていただきたいと思います。

(上毛新聞 2004年11月4日掲載)