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◎経験は無駄ではない 十一月になると、年賀はがきが発売される。わが家にとって、年賀状は家族の一年間を振り返り、友人知人に(勝手に)報告する“年報”となる。 この一年間、いろいろな人と出会い、いろいろな体験をした。中でも、先輩諸氏と設立した会社の役員を辞任したことと、キャリア・コンサルタント養成講座に通ったことは、組織と個人のかかわり方を考えるきっかけになった。 誰でもそうであるが、生きているとチャンスやアドバイスを与えてくれる人に出会う。ありがたいことだ。中には、「それは駄目だ」などと断定的に道を示そうとする者まで現われる。しかし、最後は結局、自分で選ぶしかないのだ、ということを実感している。 そんな中で、前橋商工会議所の会報(六月号)の執筆に続き、「伸びる企業の人材活用」と題した座談会に参加し、会報九月号に掲載された。この座談会では、ニートやフリーターといった存在について触れている。 この座談会で、私は自分自身が二十六歳まで定職に就かなかった理由を「特定の会社に入ることが、その後の自分の一生の職業を決めてしまうことのように思い込んでいた」と発言した。私の周辺では、三十代に大きな転身をした友人が多い。フリーターから医療短大に進学し、理学療法士になったKさん、電気修理技術者から歯科技工士に転じたHさん。 私の道も、決して真っすぐではない。あっちこっち寄り道だらけで、王道を歩んできた方たちから見れば、とんでもない経歴だ。しかし、このフラフラ経験は決して無駄ではなかった、といま感じている。 そんな私が今後取り組みたい仕事は、組織と個人の双方の思いが通じ合う仕組みを実現するお手伝いだ、と考えている。それは決して教え導くスタイルではなく、尊敬できるクライアントとともに考え、悩むというアプローチだ。 中には、あの人は○○だから、教えてやらなければいけないという使命感に燃えて“指導”するコンサルタントがいるが、私にとって、その方法は不可能だ。相談者から教えられることが多々あるからだ。 もちろん、相談者の持たない視点を提供することは、われわれの重要な役割である。しかし、このとき相手に対する敬意が欠かせない。そんな仕事の前提となる自己開示を目的として、ブログなるインターネット上の自己紹介スペースを作成した。どうも仕事が忙しくなると、更新を怠りがちだが、続けていきたい。 最後に今年、出会った忘れられないフレーズがある。リクルートワークス研究所長である大久保幸夫氏の言葉を借りて結びたい。いわく。「天職に出合ったとき、すべての経験は無駄ではなかったと思う」 (上毛新聞 2004年10月30日掲載) |