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◎ほしい正確な情報提供 コイヘルペスウイルス病の病原体の英語表記は「Koi herupesuvirus」(KHV)で、外来の病原体といわれ、Koiはニシキゴイを表している。このKHV病はニシキゴイで流行し、世界各国間の取引中に拡大していった。日本では昨年に確認されたが、それ以前はどうだったのだろうか。外国と取引をしている友人に実情を聞いてみると、原因不明の大量死亡は相当前から頻繁に起こっていたようである。 一九九〇年後半、KHV病はイスラエルに端を発したが、同時期、アメリカでも発生の記録が報告されている。大量死亡の事例からだと日本同様、数年前にさかのぼるのではないだろうか。ただ、養殖コイ(食用コイ)での発症事例は昨年が初めてといわれ、霞ヶ浦での養殖ゴイが処分されるテレビ報道には、「ついに来るべきものがきた」と一抹の不安が走った。 国内ではアユの冷水病問題が解決できず、その上、コイまでもとなると影響は大きく、特に本県の魚が「アユ」で、コイは国内生産量でも上位を占めている。これは大変な事態であることに間違いない。しかし、産地でコイが処分される前に放流種苗として各地に出荷され、移動先で伝播(でんぱ)していることは、以前の琵琶湖産アユのビブリオ病や、現在も続いている冷水病と同様な経緯をたどっている。 冷水病の恐ろしさは他の魚種に感染し、それらの魚種が保菌魚になることであるが、このウイルスの疫学はどうなのか。古い魚病学の書籍にはコイの水疱(すいほう)症といわれるヘルペスウイルスの感染症の記述がある。私も現場で幾度か見たことがあり、これは人の水胞症と同じ症状で、同類には帯状疱疹(ほうしん)をはじめ、いろいろな疾病がある。はたして人に影響はないのであろうか。 現在、他魚種への感染、DNAなどの検討はされているが、分類上、ヘルペスウイルスと同類に入れるべきか、多少疑問が出ている。たとえ異種にしても鳥インフルエンザウイルスの例もあり、絶対に人には影響はないとの結論には、少し時間がかかりそうである。それにしてもチェック態勢の不備は歴然としており、PCR法(合成酵素連鎖反応)による方法で調べているが、DNAを扱うにはある程度の熟練が必要である。 一般には細胞培養を行い、これにウイルスを加え、細胞変性で判定する簡単な方法はあるが、それにはこのウイルスに感受性の強い細胞の作出が必要である。現存しないのであれば、この検出が可能な細胞の作出を試みるのが必須で、PCR法と兼ねればさらに正確な結果が得られ、場合によっては検出時間も短縮できるのではないだろうか。 以前、エロモナス菌の感受性株を作出するのに毎日、実験して三カ月ぐらいかかったことを思い出し、本当の基礎研究はここにあると声を大にして言いたい。最後に、このウイルスの活性は水温が非常に影響するため、冬期に検査しても検出は難しい。従って事実はどうなのかを検出可能な時期にチェックし、温泉をはじめ地下水、湧水などの問題点の指摘を含め、正確な情報の提供を促したい。 (上毛新聞 2004年10月28日掲載) |