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群馬司法書士会企画部長 岡住 貞宏さん(安中市古屋)

【略歴】高崎高、慶応義塾大卒。1994年に司法書士登録。群馬司法書士会理事。司法書士会では、昨年4月に民事訴訟代理権を取得した活動のPRや、ヤミ金融問題にも尽力する。

司法ネット構想


◎頼りがいのある制度に

 司法制度改革の一つの柱として、先の国会において、総合法律支援法が成立した。この法律に基づき、平成十八年度中に「日本司法支援センター」という組織が設立され、全国各地にその支部(地方事務所)が設けられることとなった。これは「司法ネット構想」と呼ばれ、市民が司法制度をより利用しやすくするために、司法へのアクセス拠点を全国的にネットワーク化するものだ。

 わが国の司法制度は、これまでさまざまに批判されてきた。例えば、「市民は、紛争やトラブルを法律的に解決したいと思っても、一体どこにそれを持ち込んだらいいのか、その窓口が分かりづらい」という批判がある。裁判所ごとに地域的な管轄や取り扱う事件の種類が複雑に異なること、市町村や司法書士会、弁護士会が行う法律相談も連携協力の体制がきちんと整えられていないことなどが、その原因であると考えられる。

 今後は、「アクセス拠点」としての司法支援センターに持ち込めば、事案に応じ、解決のために最も適切な機関・専門家の紹介を受けられることになる。

 また、いわゆる「司法過疎」の問題もある。現在、県内に六十九ある市町村の中で、司法書士がいるのは約半数の三十七市町村、弁護士に至っては八市にしかいない。司法書士・弁護士のいない市町村の住民が法律相談等の法的サービスを受けるためには、他の市町村まで出向かなければならないのである。

 司法支援センターは、この司法過疎を解消する役割も期待されており、地域の実情に合わせ、これまで法的サービスを受けることが困難であった地域にも「アクセス拠点」としての事務所を置くことが検討されている。

 現在、社会のあらゆる分野で進行している規制緩和は、「事後救済型社会」の実現を目指すものとされている。これまでの社会は、行政指導等のさまざまな「規制」により、問題が起こるのを「事前に」防止しようとする「事前規制型社会」であった。それに対し、あらゆる活動は原則として各人の自己責任に任せ、問題や紛争が生じたときに、法律等のルールに従い事後的な救済・解決を図るのが「事後救済型社会」である。

 このような事後救済型社会においては、間違いなく司法制度の重要性が高まる。司法は、最も強力な「救済手段」だからである。逆に言えば、肝心の司法制度が頼りない、利用しにくいものであっては、社会は危機的な状況に陥ってしまう。事後救済型社会においては、司法制度の信頼性・利便性が要というべきである。

 そして、司法支援センターを中心とした司法ネットの構築が、司法制度の信頼性・利便性向上の要となるであろう。司法書士会も、この組織の運営と連携に協力すべきことが法律によって定められている。市民にとって利用しやすく、頼りがいのある司法制度実現のため、力を尽くしていきたい。

(上毛新聞 2004年10月27日掲載)