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◎道場はクラブそのもの 「やったー、背負い投げで先生を投げたぞ」と、小さな握り拳でガッツポーズ。小学校一、二年生が真剣な面持ちで、大学生と乱取り練習を繰り広げる。 関東学園大学柔道部は「おおたスポーツ学校」の分校指定を受け、月に三回、水曜日午後七―九時の時間を利用して、地域の小中学生を対象に柔道を通したスポーツ教室を開講している。現在では、子供たちも三十人近くになり、指導に当たっている本学学生やOBの数も十人近くに及んでいる。もちろん私も道場に立って、子供たちと一緒に楽しい時間を過ごしている。 実は、「柔道教室」と言わずに「柔道を通したスポーツ教室」と表現させていただいた裏には理由がある。この分校では、子供たちが柔道着を用意しなくてもよいことになっている。TシャツとジャージでもOK。私にとっても、学生・OBにとっても、柔道を専門的に指導するというよりは、柔道の動きや運動特性を利用して、子供たちの健全なる発育発達に寄与することを第一のねらいとしているからである。 そのため、柔道そのものの練習は全体の三―四割程度。正しいストレッチ、動き遊び、伝承遊び、ボール遊び、縄遊び、受け身遊びなど、「遊び」を中心にカリキュラムを構成し、柔道を子供たちの発育発達に寄与できる要素として融合させたクラスを展開している。 従って、父母たちにも、はっきりと「もし、柔道をもっと専門的に習いたい場合は、居住地区に近い道場やスポーツ少年団を紹介します」と明言させていただいている。そうは言うものの、来校する子供たちには柔道の楽しさ、だいご味を感じてもらいたいのも本音。冒頭で回想したように、子供たちの喜ぶ姿を垣間見るにつけ、その思いは募るばかりで、とどまることはない。 さて、太田市では本学で展開しているようなスポーツ事業をかなり広範囲の種目で実施し、その成果も着実に上がっている。少子化に伴う学校環境の変化やスポーツ環境の変化は致し方ないことであり、文部科学省が推進している総合型地域スポーツクラブ育成事業は、いわば時代の必然でもある。太田市でも、これを受けて「おおたスポーツ学校」を開校し、本学での展開を含めて目覚ましい発展を遂げている。 ところで、総合型地域スポーツクラブの推進だが、学校主導のクラブ形態から、ヨーロッパ型のスポーツクラブ形態への環境移行と考えれば、理解しやすいかもしれない。サッカーで代表されるように、ヨーロッパではもともとスポーツと地域とのかかわりは深く、大人も子供もスポーツを通して人格が形成され、あるいは帰属意識が涵かん養ようされると言っても過言ではない。 クラブは教育の場、社交の場、社会規範を培う場でもある。そして、その教育理念は一貫性を有し、揺るぎがない。日本での定着は難しいと言う方も多いが、武道種目の道場はクラブそのものではなかろうか。温故知新。まさに武道ルネサンスである。 (上毛新聞 2004年10月23日掲載) |