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◎自主性促す働きかけを きょう十九日、中之条町で「吾妻経営懇話会」の創立四十周年記念式典が行われます。この会は、吾妻郡東部の若手経営者の研さんを目的とし、会員数は現在約六十人、四十年間の在籍者数は三百人を超えます。 五十歳になったら会を卒業するという会則があり、私もこの会に十七年間在籍し、二年前に“卒業生”となりました。 この会の創立当時の電話は交換台を呼び出し、相手先の電話番号を交換手に言ってつないでもらう方法で、市外への電話はつながるまでに相当時間がかかったそうです。「お待ちくださいと言われたまま、いくら待ってもつながらないので、自転車に乗って隣町の相手先へ出向いた。着いてしばらくしてから電話がつながった。将来は合併して一つの町になって、もっと速く電話がつながるようにしよう」。当時の若手経営者たちのこんな会話が、今でも逸話として残っています。 つまり、町村合併をするために、若手経営者たちが研さんを通じて理解を深め、地域リーダーとしての資質を高めよう―。そんな目標を持った会です。経営者は当然、その企業のリーダーですが、同時に地域リーダーとしての役割を担っている、との基本理念が根底にあるのです。 発足当時の経営者の多くは、自分の意思を命令によって組織に伝え、その代わりに忠誠を誓った社員の面倒を見るというスタイルでした。地域社会に対しても、大きな発言力や意思決定への影響力がありました。しかし、このような権威的手法は、企業でも地域社会でも通用しなくなり、高度成長経済の終えん期ごろは組織管理という効率的なやり方に移行しました。 そして、四十年後の今は、深刻な経済危機にさらされ、先行きが見えにくくなったこともあって、組織の総意を尊重し、合意を必要とするという発想が広まっています。 しかし、この全体合意という進め方は、リーダー不在の場合、あまりうまく機能しません。合意に時間がかかり、めまぐるしく変化する状況への対応が遅滞してしまうからです。このことが、企業経営や地域経済をますます悪化させている、ともいわれています。 もちろん、企業の社員や地域社会の人々は、個性を無視するような管理手法に対して明確に拒否反応を示します。しかし、リーダーが不要だとは思っていません。組織や地域の将来を洞察したビジョンを示し、状況の変化を先取りし、それに適応できる組織を整え、導いてくれることをリーダーに期待し、固有の特性を生かしたいと考えているのです。 吾妻郡東部四町村の法定合併協が事実上頓挫してしまいました。これにはさまざまな事由があるでしょうが、企業のリーダーたちが、地域の人々から期待されている地域リーダーとしての役割を十分に果たしていないことも、一因かと思います。 吾妻経営懇話会の現在の会員、そして卒業生それぞれが、地元吾妻郡東部の町村合併に対する考え方をより明確にし、地域の人々の自主性を促す働きかけをすることが、この会の四十周年に最もふさわしい記念事業といえるのではないでしょうか。 (上毛新聞 2004年10月19日掲載) |