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県児童養護施設連絡協議会長 田島 桂男さん(高崎市下豊岡町)

【略歴】群馬大(古代史考古学専攻)卒。高崎市中央公民館長、市南八幡中・並榎中校長、市教育研究所長を歴任。児童養護施設希望館施設長、県福祉審議会委員、高崎市史編さん委員・同専門委員、育英短大教授。

「ぐんま風の家」開所


◎青少年の自立に支援を

 今年一月二十一日、「青少年の自立を支える群馬の会」(高浦孝好会長)が設立された。それからわずか七カ月。八月二十九日には自立援助ホーム「ぐんま風の家」の開所式が行われた。この家のことは以前に紹介したが、肉親からの虐待、その他の理由によって、帰る家がない青少年のための安住の家である。

 「風の家」は、広さ約二百平方メートルの二階建て中古住宅。内部を改装し、入居者用の個室六室、共同の台所と居間、親の代役を務めるスタッフの部屋などができた。県民会館近くの前橋市街地にあり、車の運転ができない入居者の通勤を考えての選定である。経費はおよそ千九百万円を要した。

 発足間もない「群馬の会」に、こんな大金があるはずはなく、高浦会長(中央電機商会社長、群馬学院協力会長)の個人名義の銀行からの借入金によって支払われた。当座の運営費は、会員の会費(年会費個人六千円・学生千円、法人一口三万円)とチャリティーのゴルフコンペやコンサート等の収益で賄うことになっている。

 またたくうちに「風の家」が実現したのは、会長の手腕と決断、それにスタッフの熱意があったればこそである。

 九月二十日、A君が入居して風の家は実質スタートした。一人であっても仕事場に送り出し、迎え、食事、入浴、しばしの団欒(だんらん)等、すべてにスタッフの誰かがいなければならない。また、これにかかわる者は、誰でもよいというわけにもいかない。幸いなことに、会員の奉仕により、不都合なく順調にすべり出した。

 群馬の会の事務局長には、学生時代から非行青少年とかかわりを持ってこられた、高崎経済大学の細井雅生教授に就いていただいた。また、細井ゼミの学生諸君が福祉の勉強かたがた学生会員として参画し、実動部隊として活動してくれている。この夏は改装の手伝い、事務用品、日用品の調達、会報づくりなどで、旅行もできなかったと聞いている。ありがたく、頼もしい限りである。

 「ぐんま風の家」は、大きな風を得て港を出た。しかし、問題はこれから。一番大切なことは、受け入れた青少年をきちんと自立させる援助を続けることである。そのために、力を貸していただける多くの方々に会員参画を働きかけるとともに、借金返済をしなければならない。国や県に補助金がもっといただける家にしたい。NPO法人格も得たい。入居者が増えてきたときに備えて、家具、日用品類も整えてやりたい。親代わりになってくれるボランティアも増やしたい。

 善意の輪が大きく広がって、第二、第三の「風の家」ができるようになったらと、願うことは山ほどである。ご賛同くださる方は「ぐんま風の家」(前橋市日吉町一―四―一五、電話027・231・2667)にご連絡くださるよう、お願いいたします。

(上毛新聞 2004年10月10日掲載)