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◎小さな政府へ転換を 日本の将来を考えるとき、私が一番気掛かりになっているのは、巨額な財政赤字である。その額は今や九百四十兆円を超しているが、言うまでもなく国民が何らかの形で負担して返済するより仕方ない借金である。今の時点で、日本人の巨額の金融資産の大半は消えてしまっている、というではないか。 日本の産業は将来とも頑張ってくれるだろうし、年金が減っても何とか生きていけるであろう。しかし、国としてこんなに大きな赤字を子孫に残すことが許されるのであろうか。平均すると国民一人当たり七百五十万円、いずれ近いうちに一千万円となる。今からでも遅くはない、少しずつでも返却していかなければならない。しかし、現実には国債の利払いも増えているため、赤字はいまだに増え続けている。尋常な精神の持ち主なら、この事態に居ても立ってもおれない気持ちとなるはずだ。 政治家や官僚や評論家の多くは、赤字が増えても景気がよくなれば、税収の増加で返却できるという。過去十年余りの統計を見る限り、かなり景気のよかった時期もあった。しかし、それでも赤字は増え続けた。間もなく日本の総人口は減りはじめるし、老齢人口が増えるので、もう昔のような経済成長は期待すべくもない。こんな借金返済の困難さを十分に知った上で、今年も来年も国債頼りの赤字の国家予算を許している。 政治家は地元や選挙母体を有利にする予算獲得ばかりに熱心であり、官僚は自分の守備範囲の中での予算を増やすことに励んでいる。国民も目先の自分の損得で予算増を主張する。政府予算が付いた官の事業では、構造的無駄遣いの体質はいつまでも直りそうもない。 財政赤字を早く何とかしなければと思うのだが、予算削減や増税のような嫌なことはいつも先送りである。赤字解消の切り札として消費税を三倍にする案が有力のようだ。以前には、それもやむを得ないと思っていたものだが、値上げによる増収は本当に赤字解消に使われるのだろうか。日本のこんな体質を見ると、まず徹底的に小さな政府にする努力が必要だ。それこそ国防と治安と最小限の社会保障だけの支出にとどめ、あとは全部受益者負担の体制にするといった荒治療をせざるを得ないのではなかろうか。 国民は、もう国に多くのサービスを期待しない方がよい。下手に税で負担するから効率が悪く、無駄が生ずるのである。自分で苦労して稼いだお金と、安易に徴収された税金では、お金の使用効率が大いに異なるのである。今話題の郵貯の資金も政府に渡され、回収できそうもない事業にかなり投資されているのである。今年のような好景気はいつまでも続くはずはない。今年で赤字が減らないようであれば、国民に苦難を強いる覚悟で国の方針を大転換してほしい。 こんな深刻な不安が存在する中、将来への危機感を持つ人がほとんどいない日本は全くどうかしている。 (上毛新聞 2004年10月8日掲載) |