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◎患者に高度な医療を 三割を超える国民が、今や何らかのアレルギー疾患をかかえている。わが国でアレルギーに悩む国民の数は、ここ二十年来増加の一途をたどる。 気道(空気の通り道)、皮膚、目、消化器などさまざまな臓器に発症するアレルギーは、症状が多彩である。そのため、アレルギーの方々は、皮膚科、耳鼻科、眼科、小児科、内科など、多くの診療科を受診する。 近年、わが国においても、欧米のように診療標榜科(ひょうぼうか)としてのアレルギー科が認められたが、その普及はいまだ不十分である。加えて、大学病院をはじめとする地域基幹病院をみても、各科が連携し、体系だったアレルギー科の診療を行っている施設は極めて少ない。アレルギー科のある医療施設を受診してみると、小児科や皮膚科だったり、耳鼻科や眼科であることはよく経験する。 医療の進歩には臨床研究が不可欠であることが、アレルギー疾患診療においてもいえる。しかし、わが国の経済状態や国立大学独立行政法人化などの社会的背景を考えると、診療と研究が密に連携したアレルギー疾患診療施設が全国に普及することは、容易でない。事実、わが国においては、アレルギー疾患診療と臨床研究がダイレクトに連携したアレルギー専門の研究所が、公的および私的機関を問わず、いまだにないのが実情である。 アレルギー疾患は文明病である。そのため、アレルギー疾患診療施設の立地条件は、生活環境のよい土地が望ましい。豊かな自然に恵まれ、生活環境のよい本県に、アレルギー疾患診療と臨床研究を補完するアレルギー専門の研究所を設立することは、極めて意義あることである。 一方、医療法人醫光会新邑楽病院が、東毛地区における初の日本アレルギー学会認定教育施設として、今年五月三十一日に認められた。認定に際し、アレルギー呼吸器外来、アトピー外来、小児アレルギー外来の専門外来を設け、診療は二人の日本アレルギー学会認定医と一人の指導医が担当してきた。 こうした一連の動きのなか、このたび新邑楽病院に併設して、群馬アレルギーぜんそく研究所を今月九日に開設する。当研究所には最新の設備を備えた二つの研究室と細胞培養室、研修室などがあり、わが国初の医療法人による本格的なアレルギー専門研究所である。 研究員は医学のみならず薬学分野でアレルギー研究に携わってきた者で、四人のアメリカ留学経験者がいる。アレルギー疾患診療と臨床研究をダイレクトに連携することにより、アレルギー疾患に対処するより高度な医療をめざすための極めてユニークな研究所である。 豊かな自然に恵まれた群馬の地での新しいチャレンジが、アレルギー疾患に悩む方々に、少しでも光明を投げかけることができればとの思いで、船出したい。当研究所の今後の活動に、ご支援とご理解をいただければ幸いである。 (上毛新聞 2004年10月4日掲載) |