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◎地道に外国語の学習を 小学校や中学校の音楽の授業で、外国語の専門用語をいくつも教わった。アンダンテ、アレグロ、モデラート、アダージョ、カンタービレなどという言葉が今でも記憶に残っている。私は音感やリズム感が鈍いためか、教師の解説を聴いても全く理解できなかった。 日本語には無数の外来語が定着しているが、ある特定の分野の用語が一つの外国語に集中している現象が見られる。例えば、スキーや登山の領域で使われるゲレンデ、シャンツェ、ヒュッテ、ボーゲン、シュプール、ザイル、アイゼン、ハーケン、コッヘルなどはすべてドイツ語。ドイツ語圏の人々が日本にスキーや登山の技術を伝えた影響である。 また、美術分野のアトリエ、デッサン、エチュード、モチーフ、ポーズなどという用語はフランス語に由来する。フランスを近代美術の師と仰いだ歴史の名残である。実は冒頭に列挙した音楽用語はすべてイタリア語である。学校で教える音楽用語は、なぜかイタリア語と相場が決まっている。 イタリア語は単語の語尾が原則として母音で終わり、また母音の種類も日本語と同様にアイウエオの五通りしかない。そして、基本的に一字一音で例外や特例がほとんどないから、書いてある通りに読み、聞こえた通りにつづればよい。英語と大違いで、発音も表記も日本人にとって極めて学びやすい外国語の一つと私は感じている。イタリア語をすべてカタカナで書いて日本語風に読んでも結構、イタリア人に通じる。 昨今は日本でもイタリア料理の人気が高まり、イタリア語の料理用語も身近な存在になってきた。私は外食の機会があれば、真っ先にイタリア料理店を選ぶことにしている。メニューに登場するVINO(ヴィノ)、RISOTTO(リゾット)、GELATO(ジェラート)、CAPPUCCINO(カプチーノ)、AGNELLO(アニェッロ)などはOで終わり、PIZZA(ピザ)、PASTA(パスタ)、GRAPPA(グラッパ)、MOZZARELLA(モッツァレッラ)などはAで終わっている。また、SPAGHETTI(スパゲティ)はIで終わり、VONGOLE(ボンゴレ)はEで終わっている。 Roma non fu fatta in un giomo. 「ローマは一日にして成らず」のイタリア語の原語である。大事業は一朝一夕にしては達成できない。余談だが「老婆は一日にして成らず」という駄洒落(だじゃれ)を飛ばした人がいる。なるほど、ごもっともである。老婆になるには八十年も九十年も要する。 去る五月に大阪で開催された、ある国際団体の世界大会に出席した際にイタリア人の来賓と歓談する機会に恵まれ、イタリア文化に対する興味や関心が一段と高まった。今後も世界で最も学びやすい言語の習得を目指し、一日にして成らず…を座右の銘として地道な学習活動を続けるつもりである。 (上毛新聞 2004年9月29日掲載) |