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◎独自の“成功物語”を 今、全国のいわゆる「中心商店街」といわれるところの多くが苦境に陥っている。その衰退を象徴する現象が空き店舗の問題である。よく「シャッター通り」などといわれ、マスコミに社会現象として取り上げられることも多い。都市によっては、商店街の店舗のうち七割の店がシャッターを降ろし、もはや商店街としての体をなさない悲惨なケースもある。 なぜ、このような事態になってしまったのか。その要因は複合的に積み重なっている。その第一は、郊外の大型店が規模と効率のメリットで大量廉価販売を追及し、商店街の各店舗が価格競争に巻き込まれ、より高度な専門店に脱皮し得ないまま、抜本的な対策を打ち出せないでいることだ。 二番目は、中心商店街の店主の多くが高齢化し、後継者にバトンタッチできずに廃業に追い込まれている現実がある。三番目は、空き店舗の家賃の大半が現実と乖かい離りして高い水準にあり、中心商店街への新規出店希望者にハードルを高くしていることだ。 四番目は、中心部にある空き店舗の権利関係が複雑であること。空き店舗が解消しない原因の一つで、土地と建物の所有が別個であるケースや土地の権利が複数者になっていたり、所有者が遠隔地にいたり、特定できない場合もある。また問題なのは、空き店舗の所有者がさまざまな理由で店舗物件として貸し出す意思を有していないケースである。こうなると対策の立てようがない。 このように一口に「空き店舗問題」といってもそこに絡む事情は複雑で、鮮やかな解決策を打ち立てることは難しい。しかし、これまで商店街や行政が手をこまねいてきたわけではない。前橋市の中心商店街でも、ここ十年間にさまざまな空き店舗対策事業を行ってきた。市民に向けた芸術作品の展示ルーム、県内中山間地の特産品販売所、障害者の生活相談室など多くの事業にチャレンジしてきたが、結果的には現在まで継続営業しているものはほとんどない。家賃などへの補助金の年限が切れた時点で終了という結末になっている。 現在、全国的に空き店舗対策事業は曲がり角を迎えている。これまでは限られた数の店舗のシャッターを開けることに勢力をつぎ込んできた。が、今後は空き店舗の諸情報を広く発信したり、出店希望者と空き店舗の所有者との条件の乖離に商店街が微調整役を買うなど、民間の力で空き店舗を解決していくために、その環境をいろいろな発想でどう整えていくかという点に重点をシフトした方がよいと考えている。 そして、空き店舗問題を解決する上で何よりも大切なことは、これから中心市街地がどのように発展していくのか、市民生活の中でどのような場所になるべきか、にぎわいをどうつくっていくのか、中心市街地独自の“成功ストーリー”を早く作り上げることではないだろうか。 (上毛新聞 2004年9月24日掲載) |