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◎疫学調査で常時監視を 近年、世界中の交通手段が発達するのに伴い、各国からさまざまな動物がペットとして輸入されている。この結果、輸入動物から人への病原体感染の危険性が高まっている。 動物の中には観賞魚をはじめ、養殖対象魚まで含まれているが、中にはブラックバス類など生態系の撹乱(かくらん)で危ぐされている種類も多い。今回は動物由来の細菌を魚類が仲介し、人に感染するケースを考えてみる。 現在、家畜の治療には数多くの抗生剤が使用されており、特定の成長期には飼料の中にまで入れられている。そして、新たな薬剤使用に伴って薬剤耐性菌の出現が増加し、農林水産省をはじめ関係各省庁間の悩みの種になっている。 また、畜産排水の処理については、今年十一月から新しい法律(家畜排泄(はいせつ)物管理適正化および利用促進に関する法律)で規制されるが、経営体の規模によっては施設の完備は不可能に近く、排泄物は時には河川へ流れ込んだり、地下に浸透したりする。 さらに生活雑排水が加わる河川水は、大変な様相を呈している。この傾向は県内の地下水にまで影響を及ぼしており、本県で実施している名水百選および湧(ゆう)水の水質調査結果で明らかになるものと、公表を期待している。 さて、川遊びや魚釣りを楽しんでいる水の中には、どのような生物が生息し、特に魚類はどのような細菌やウイルスを持ち、人とのかかわりはどうなのか。最近はコイヘルペスが話題になっているが、コイヘルペス病は次の機会に回すとして、今回は人に感染する病原体に絞って簡単に述べてみたい。 動物から人への感染症は比較的多い。このうち水(水生動物)を介して人に感染するものは、細菌性胃腸炎を起こす細菌が主体で種数は少ないが、養殖業者にとっては大変な問題である。二十年ほど前、動物由来のある細菌が魚類に付着して食中毒の原因菌と推定され、出荷魚から除菌する方法を見いだすまで約半年かかった。その後、取引先の県衛生研究所から出荷許可が出たときは、本当に安どしたものである。 時代は進み、環境はBSE(牛海綿状脳症)に続いてSARS(重症急性呼吸器症候群)、鳥インフルエンザと、あたかもウイルス時代の様相になっているが、この問題以前に魚類由来の薬剤耐性菌の課題が残っている。 海水・淡水中のビブリオ菌およびエロモナス菌のある種類は、食中毒の原因菌として指定されており、薬剤耐性プラスミド(因子)としては近縁関係にあるが、耐性型は菌種独特かつ特異的な特徴をもっている。このようなプラスミドの人および家畜ならびに魚類間の疫学調査は、日ごろから実施し、常時監視しておかなければならない。 また、水を介した食品だけでなく、交通機関での輸送状況の把握も必要であり、今後はさらに深層海水の動向までもモニタリングの必要性があると考えられる。機会があれば水にかかわる諸問題で、魚類とウイルスをはじめ水量、砂防、ダム、河川(河川工作物)、ため池などについても意見を提起し、考えていきたい。 (上毛新聞 2004年9月16日掲載) |