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県児童養護施設連絡協議会長 田島 桂男さん(高崎市下豊岡町)

【略歴】群馬大(古代史考古学専攻)卒。高崎市中央公民館長、市南八幡中・並榎中校長、市教育研究所長を歴任。児童養護施設希望館施設長、県福祉審議会委員、高崎市史編さん委員・同専門委員、育英短大教授。

児童家庭支援センター


◎知ってほしい相談の場

 心配そうに、心もとなげに、小さな子の手を引いてやって来た若い母親が、訪ねて来た訳を話し、カウンセリングと指導を受け、晴れ晴れとした顔に変わって帰って行く。

 これは、私の勤務する児童養護施設「希望館」(高崎市)に併設されている「児童家庭支援ホーム希望館」を訪れた若い親子が見せた一つの光景である。

 児童家庭支援ホーム希望館は平成十年五月、厚生省(現厚生労働省)から出された「児童家庭支援センター」の設置運営策を受け、翌年十月に開設した。県内ではこのほか太田市の「東光虹の家」に、全国ではまだ四十七施設にとどまっている子育てにかかわるあらゆる相談に応ずる民間の施設である。

 希望館は年中無休、一日二十四時間体制で相談に応じている。相談はもちろん無料である。

 厚生省のセンター設置の目的は、「地域の児童福祉の問題について、地域住民などからの相談に応じ、必要な助言をするとともに、保護を要する児童や保護者に対する指導を行い、児童相談所、児童福祉施設等との連携の上、地域の児童、家庭の福祉の向上を図る」としている。

 この目的に基づいて、希望館ではセンター長のもと、専任の相談員、保育士を置いて対応している。母親が相談している間は、保育士が連れて来た子を預かり、心配なく相談やカウンセリング、指導を受けることができるようにしている。

 昨年度の希望館の相談件数は、電話によるものを合わせて千三百件を超えた。これは、いかに子育てに悩みを持つ親が多いかということである。これら若い親たちは、気軽に悩みを打ち明けられる環境に恵まれず、孤立傾向にある専業主婦が圧倒的に多い。「いけないこととは分かっているのですが、ついこの子に手をあげてしまうのです」と、心の中を吐露する母親の悩みは珍しいことではない。

 こうした悩みを持つ来談者に対して、希望館では個々への助言、指導のほかに、孤立ぎみの親たちをグループ活動に誘い、仲間づくりを勧めている。仲間ができると、相互の心の安定が得られ、立派に立ち直っていける人も多い。こうなれば、もう支援ホーム希望館は不必要になる。

 児童家庭支援ホーム希望館が、このように活動でき、実績を挙げることができているのは、県や市の指導と援助、地元児童相談所の力添え、さらに地域のさまざまな方々の協力があったればこそと思っている。

 子供は社会の宝、すべての子供が未来の社会を担う有用な人材である。子育ては一人で悩まず、困った時にはこういう相談の場もあることを知ってほしい。同時に、子育ては親だけのものではなく、親せき、知人、広く地域社会の協力、援助があって成り立つものである。子供はみんな健やかに、幸せに成長してほしいと思うものである。

(上毛新聞 2004年9月15日掲載)