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国土交通省ITS推進室企画専門官 森山 誠二さん(東京都世田谷区)

【略歴】岡山県生まれ。東京大工学部卒業後、1986年に建設省(現国土交通省)入省。中国地方建設局、新潟県庁、本省道路局、総合政策局を経て高崎河川国道事務所長。今年4月から現職。

ETCの効用



◎より身近な道路に変革

 ノンストップ自動料金収受システム(ETC)が導入されて三年。導入当初はいろいろな意見もあったが、最近では順調な伸びとなっている。普及促進のための支援策も次々と打ち出されてきている。

 欧米に比べ、日本では道路の整備が遅れていたため、本来、無料が原則の道路ではあるが、有料制度を導入し、資金を調達して整備を進めてきた。有料道路であるので、料金所が必要となる。皮肉なことに現在では、高速道路の渋滞の原因の四割弱はその料金所となっている。また有料道路であるがために、料金の徴収コストがかさむこともあり、出入り口を多く造るわけにはいかない。

 こうした有料道路の抱える課題を一気に解決するのがETCである。全国ベースでは三百五十万台、利用率も20%を超えようとしている。群馬県内での利用率もほぼ全国並みとなっている。県内の北関東自動車道の完成により、高速道路の延長は百七十六キロ、インターチェンジ(料金所)は二十カ所となり、全国的にも恵まれた高速交通環境である。

 ETCにより、こうした環境を一層優位なものにすることが可能となる。日常生活の中で、高齢者や女性をはじめ皆が苦労することなく、料金所を通過することができるようになる。ETC専用の料金所とすることで、高速道路に簡単に出入り口が追加できるようになる。こうしたことで、高速道路は特別な道路ではなく、より生活に身近な道路になるであろうし、また群馬が首都圏からの単なる通過ポイントではなく、県内に交通を引っ張ってくることにもなろう。

 昭和五十五年に初めて関越自動車道が前橋インターまで開通して二十五年。関係者の努力により、県内の高速交通ネットワークのハードは整いつつある。さらにETCにより、ソフトの面からも大きな変革が期待される。当たり前のように思っている関越道・新座料金所の渋滞も、ETCがさらに普及することで解消されることになる。有料道路以外での支払いや、車内への情報提供手段としての利用など、さまざまな応用サービスも検討されている。

 これが、ETCをはじめとする高度道路交通システム(ITS)と呼ばれているものである。道路建設、情報通信、車両製造の三分野がドッキングしたITSの世界が社会的に浸透しはじめ、目に見えて、また実感しながら着実に地域を変えていくことになる。

 来月には名古屋でITS世界会議が開催され、世界各国の最新技術や研究成果が発表されることになっている。ITSでは世界の最前線を自負している日本としても腕の見せどころである。クルマ王国・群馬の方々も積極的に参加されることを期待している。

(上毛新聞 2004年9月4日掲載)