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◎つなげたい村の活性化 過疎化する山村地域に外国人を長期滞在させ、「外国人に日本の文化を紹介したり、子供たちや地域住民が自然と異文化に触れられる環境をつくりたい」と始めたバックパッカーズ(外国人向け宿泊施設)も、月日がたつにつれて理想と現実のギャップが広がっていきました。 原因は、外国並みにできるだけ安く泊まれるようにと設定した宿泊料金と、慣れにあります。バックパッカーズの収入では生活できず、アルバイトで何とか経営を維持していましたが、時間に追われてしまい、せっかく来てくれた外国人たちを歓迎することができず、また、そうした人材を地域のために活用することもできなくなりました。外国人との交流にも新鮮さを失い、目的を見失っていきました。 「自分が本当にやりたかったことは何か」「もう一度、初心に帰って考えなければ」と思うようになったころ、ギネスビールに出合いました。きっかけはアイルランド人からいただいたギネスビールの旗です。ギネスビールとは約二百四十年前、アーサー・ギネスが廃業した醸造所を借りて作ったアイルランドを代表する黒ビール(スタウト)で、今や世界中で愛飲されています。 しばらくして、東京にあるアイリッシュ・パブに行ったところ、そこはまさに外国。客の約60%が外国人で、日本人と楽しそうに交流をしている場所は、理想とした環境でした。日本になじみの少ない黒ビールで村おこしができないか。「日本版ギネスビールを作ろう」と考えるようになりました。それからビールについて一から勉強するようになり、ビールを知っていくうちに、いろいろなことが分かってきました。 それはまず、アルコール類の製造・販売は国(税務署)が厳重に管理していること。外国では数百種類のビールが飲まれているのに比べ、日本の大手メーカーが作るビールは、長い間「ピルスナー」というビール一種類だったこと。最後に、ビールは健康飲料だったことです。ビールを作るのに必要なビール酵母には、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、核酸、食物繊維などの栄養素が豊富に含まれていますが、大量生産、大量消費、長期保存、長距離輸送などの理由から大手メーカーのビールからは排除されてきました。 ビール酵母は心臓疾患、脳疾患、血流障害、白内障、糖尿病、高血圧などに効果があるほか、抗がん効果、肝機能強化、腎臓結石の抑制にも一役買っています。また、ダイエットや美肌効果もあるといわれています。最も注目したいのは、ボストン大学(米国)、エラスムス大学(オランダ)、フランス国立健康研究所が発表した「一日に一―二杯のビールの飲酒者は、飲まない人に比べアルツハイマー病や血管障害型痴ち呆ほう症にかかるリスクが低い」という点です。 高齢化、過疎化の進む山村地域でビールを作り、酵母入りビールを飲んで地域住民が健康になり、その利益を教育や福祉に還元できれば、村の活性化につながるのではないか。地ビールにパワーを感じました。そして、ギネスビールに出合ってから四年後、「南牧地ビール」が誕生しました。 (上毛新聞 2004年9月2日掲載) |