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◎自然の中から学ぼう 今年の暑さと空梅雨のひどさには驚きました。この異常気象の中、子供たちはどんな夏休みを過ごしているのでしょうか。 近年、休日が増え、学校や親は子供たちの学力低下を心配していますが、夏休みに普段できない経験を子供たちにさせることも大切です。 特に日常、運動嫌いでゲームやテレビに夢中になっている子供たちには、夏休みこそ自然の中で、新しい自分に出会える機会を作ってやることが必要だと思います。 自然には命が満ちあふれ、不思議なことがたくさんあります。最近、里山の自然の素晴らしさが再確認され、親子で田舎に出かける人たちも増えてきました。森の中は涼しく身も心も癒やされますし、油断すると危険なことも起こるかもしれません。危ないことを注意深く避けることは、体験しないと身に付きません。 年々、増え続ける自殺者。特に若者の数の多さに絶句します。そんなに簡単に人生を見限ってしまう痛ましさに、心の闇を感じます。 「なぜ?」。社会をがく然とさせた小中学生の殺人や傷害事件。子供の心が分からなくなってしまった大人たちは、この根の深さにきちんと対応しなくてはならないと思います。 予想のつかないまま、人々はいつの間にかあふれる先端機器の作り出すバーチャルの世界に押し流されてしまっているのではないか、と不安を感じます。私たちの世代では、子供の遊びは自然の中でやっていました。遊びながら多くのことを学びました。たくさんの生と死、五感を働かせる大切さ、自然の不思議さへの興味など、知識というより身に付けたという感じがします。 七月に大好きな映画『となりのトトロ』をまた見ました。楽しくて懐かしいだけでなく、見るたびに現在の便利さと引き換えに多くの大切なものを失ってしまったことに気付かされるアニメです。時代の流れの変化に一番深く影響されるのが子供なのだと思いました。 例えば、家で毎日決まった手伝いをしていない子供は、自分が家で役に立っていると実感しにくいでしょうし、身のこなしもうまくできないでしょう。生きているという実感も、本当の死に直面してわいてくるものなのです。 自然の厳しさ、素晴らしさ、不思議さも、実際に自然の中で感じ取るものだと思います。命の大切さ、かけがえのなさも、説明されるよりも、自然の中のたくさんの命から実感できる方が身にしみるのではないでしょうか。 たくさんの命のおかげで自分が生かされていることに感謝できる心になれることが、大人にも子供にも大事なことなのです。 人間もほ乳類の一種です。温い肌で母子の愛は深まり、子供は自然の中で好奇心や冒険心を刺激され、失敗しながら器用さや敏びん捷しょうさを身に付け、体力や気力も育っていくのだと思います。自然が遠くなってしまった現在、できるだけ自然に触れる機会を親はつくってあげてください。かわいい子供たちのために。 (上毛新聞 2004年8月11日掲載) |