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◎他人をいたわる社会を 前回、介護について書いたところ、たくさんの方から問い合わせやご意見をいただき、関心の高さをあらためて感じました。 その中で考えさせられたことは、いかに皆がストレスを抱え込んでしまっているか、ということでした。現代社会においては介護はもちろん、育児や仕事、対人関係など幅広く潜んでいるストレスの発散方法がうまくできないという生易しいレベルではなく、どうしたらよいか分からずに自分で抱え込んでしまい、そのストレスから生命の危機にまで達してしまっているところに、大きな問題が隠れているように思います。 それは、社会全体の不景気に伴って、生活全体が不安定になってきてしまっている不透明な現代病ともいえます。個々が抱えているストレスのはけ口を見つけられないまま、弱者である幼児やお年寄りはもちろん、逃げ場を失って自傷行為、果ては自殺という自分にまで、その矛先が向いてしまっていることは、精神的なゆとりのなさに原因の一端があるのではないでしょうか。その結果、「あんなに優しい人がなぜ? 端で見ていて分からなかった」となってしまうのでしょう。 元来、霊長類である人間は、他人が弱った場合には排除するのではなく、いたわりを与えることができる族です。しかし、現在では皆が忙しく、核家族や少子化等で近所との付き合いも疎遠になってしまうため、結局は家という密室にこもりがちになり、家の中にいる弱者を虐待してしまうという悪循環に陥ってしまっているように思えます。 いろいろな状況や条件があるので、一概に解決法は見つからないでしょうが、子育てをしながら仕事を持ち、老人介護も現実問題として受け止める世代として、ストレス解消の一つを提案させていただければ、まずは外に出て、いろいろな人や物と出会うことをお勧めします。自分や家の中にこもらず、いろいろな外の世界を見てみる。その中で、感動するものや自分の悩みを聞いてもらえる人と出会い、そして自分が泣ける場所を見つけることではないでしょうか。 それは配偶者や友人、さまざまな支援や活動をしている公的機関やボランティアグループなどでもよいでしょう。もちろん、お金をかければ心療内科などもあります。もし、悩みを受け止めてもらえるときには、自分を責めずに自分の愚痴を聞いてもらうこと。そして、聞いてもらうことに後ろめたさを感じないこと、さらに感謝の気持ちと何よりも無理をしないことでしょう。 受け止める側は、ストレスは個人によって感じ方が違うので、その人を責めないようにしましょう。他から見れば大変なことも全然苦にならない人もいれば、小さなことがストレスになる人もいます。世の中全体がゆとりを持って、他人に優しくいたわりを持てる社会になるには、まずは自分に優しくなり、自分を受け入れて自然体で生きることが一歩かと考えます。 (上毛新聞 2004年8月6日掲載) |