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◎消えていく村の幼稚園 今、いろんなところで市町村合併問題が起こり、合併の枠組みや内容で論議を呼んでいる。私が園長を務めている富士見村の小暮幼稚園もそんな嵐の中にいる。 富士見村は今、前橋市との合併を来年五月を期して準備を進めていると聞く。そんな中で、無認可の幼稚園には補助金を一切出していないし、出せないという前橋市の方針に、閉園せざるを得ない状況となっている。 昭和三十年代、村内各地に幼稚園が設立され始めた際、小暮区民から「わが地区にも幼稚園を設立してほしい」との要望が高まった。小暮幼稚園は当時の区長、有識者ら多数の方々が発起人となり、区民の承認を得て「大字小暮区立小暮幼稚園」の名称で、小暮公会堂を園舎に充て、昭和三十七年四月から幼児教育を開始。その間、小暮の代表区長が理事長となり、区長、区長代理、区長を終わった人や小暮地区選出の村議会議員(現在六人)が役員になり、園長を選出して運営に当たってきた。 従って、村には村立の幼稚園はなく、準公立的な立場で四十三年間にわたり、村から補助を受けながらの幼児教育。卒園児も千三百人を超え、小暮地区の子供を育てる中核として、それなりの実績を挙げてきた。今年も七十人の在園児を預かり、役員の皆さんのボランティア的奉仕活動に支えられ、教員も全力で教育にあたっている。前橋市との合併が本決まりとなり、村や市に三年間の猶予をお願いしてきたが、補助することが無理ということで、幼稚園の役員会も閉園することを決定した。 確かに、開園した当時の幼稚園の必要性の高かった時代に比べ、村には私立幼稚園が三園に保育園、さらに来春にも新しい保育園の開設を控えている。幼児の減少が社会問題化している中で、県の指導も受けながら努力したが、幼稚園の新設は極力抑えるという国の方針や、公会堂での対応では認可を受けることは不可能となり、断念せざるを得なくなった。 現在、三年間在園する予定で入ってきた年中、年少の園児や保護者に申し訳ないとおわびしながら、適切に転園してもらい、転園先やその先の小学校で友達と仲良く遊び、学び合っていく環境を整えることが園長の務めだと自覚し、幼児教育に最後の花を咲かせようと皆さんと話し合っているところです。 このように合併をめぐる問題はプラス面だけでなく、守られてきたよき伝統も失われ、消えていく運命にさらされる危険も含んでいる。皆さんの知恵で何とかよい方向を見いだし、長い目でみて、よかったと言われるよう頑張っていきたい。 私のかかわっているサッカーでも、子供たちの減少から、小学生では女子も男子に加えて試合にでることが可能になり、またそれが日本の女子チームのオリンピックの参加の一因にもなっていると考えている。いずれにしても、時代に即応した対処が望まれる時代がきている。閉園問題にも、皆さんの理解を得ながら対処できたらと願っている。 (上毛新聞 2004年8月1日掲載) |