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油屋菓子店主 藤田 省吾さん(鬼石町鬼石)

【略歴】鬼石中卒。八塩鉱泉煎餅本舗油屋菓子店8代目。2002年8月に商店主や主婦ら町民約20人で「熊八塾」を設立し、塾長に就任。一般町民の考え方を町づくりに取り入れ、中心市街地の活性化などに取り組んでいる。

消防団活動



◎役割はいっそう重要に

 社会貢献活動とか社会福祉活動などを、何となく「ボランティア」と呼んでいます。ボランティア活動の意味はもっと重いのでしょうが、人間として社会を歩んでいく中で、活動手段はどうであれ、誰もが参加したことがあるかと思います。

 私の知る人たちの中に、日夜を問わず、強い責任感と熱い思いで活動している人たちがいます。それは、全国どこの自治体にもいる消防団員です。この消防団の活動こそが、私の思う究極の社会奉仕活動だと思っています。

 職に就き、家族を守って、それぞれの地域と深く結び付く。その上での活動は、災害や火災に対する出動や予防活動のほか、消息不明者の捜索など、数えたら切りがありません。常に危険と隣り合わせですから、訓練もかなりのものです。それぞれ自分の職がありますから、車両や装備の点検、火災に備えた出動消火訓練などは、夜や日曜日になります。

 その活動を支える団員の家族や勤め先の会社もまた大変で、消防団活動を経験した人なら、家族や会社の理解の上に成り立っているのだと、今さらのごとく思いをめぐらせていることでしょう。ひとたび、火災や災害を知らせるサイレンがあれば、家庭や家族のことは二の次で、現場に急行します。出動した団員の安全を願う家族はもとより、勤務先の会社でも欠員を埋めるなどして同僚の安全を思い、心配します。

 サイレンが鳴っても団員の所在が分からなければ、家族の人たちは緊急事態を知らせるのに大変な思いをします。昼でも大変ですから、夜中に至ってはさらに大変で、家族中が飛び起きて上を下への大騒ぎとなり、一刻も早く出動する手助けをするのです。極寒の出動などは、これまた大変で、防寒着やヘルメット、安全靴などは、出動の着替えをしている間に家族がそろえて送り出しています。

 団員はもちろんですが、その家族もパトカーや救急車など、すべての緊急車両のサイレンにドキッとし、大変な思いをしているのだと思います。今さらなぜ、このようなことを述べるのかと言われるでしょうが、私も二十五年余り消防団に在籍し、さまざまな方々に助けていただきました。消防団を退団して数年たち、緊急のサイレンには以前より緊張しなくなりました。退団してみて、これまでにも増して家族に感謝している今日このごろです。

 高齢少子化の中で、消防団の役割はこれまで以上に重要で、過疎地に至ってはなおさらです。地域の安全は、この消防団がいるから守られている、と言っても過言ではないでしょう。最近になって、全国どこの地域とはいわず、制服姿の消防団員の方々をお見かけすると、私の目には以前にも増して、団員の皆さんが光って見えます。と同時に、団員を支える家族の人たちに感謝の気持ちで頭が下がります。消防団員や家族の皆さんに心からエールを送ります。

(上毛新聞 2004年7月31日掲載)