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◎識別情報の管理が重要 不動産は生活や企業活動の基盤であり、価格も高い重要な財産である。この不動産を取引(売買など)する際、大きな役割を果たしているのが不動産登記だ。人々は登記によって不動産の所有者や権利関係を知ることができる。不動産を買っても登記をしなければ、他人に「自分が所有者である」ことを主張することができない。 この不動産登記の手続きを定めた不動産登記法が、このたびの国会で全面的に改正され、来年三月から施行される。この法改正は、不動産登記のオンライン申請の導入を主な内容としているが、それに止まらず、これまでの手続きを全面的に見直すものだ。 特に注意していただきたいのは、これまでの「権利書」の制度が廃止されることである。 権利書は、正式には「登記済証」といい、登記所から不動産の所有者に対し発行される書類である。不動産登記の手続き上、(例外的な取り扱いもあるが)原則として所有者の権利書を登記申請書に添付しない限り、所有名義を変えたり、抵当権を設定したりすることができない仕組みになっている。 逆に言えば、悪意ある者の手にうっかり権利書が渡ってしまった場合、それを悪用され、「知らぬ間に所有名義が他人に変わっていた」など、所有者の意図しない登記がなされてしまう可能性もある。それだけに、権利書は大切に扱われ、銀行の貸金庫に預けたり、家の中でも見つかりにくい場所に保管している人が多い。 改正法では、この権利書が廃止となり、それに代わるものとして「登記識別情報」が発行されることとなった。登記識別情報とは、例えばA1BCD2345E67のように、十二けたの英数字を組み合わせた「暗証番号」である。一つ一つの不動産ごとに異なる番号が発行され、登記申請を行う際、所有者が提示した番号と登記所に記録してある番号とが一致する場合にのみ登記申請を受け付ける、という仕組みである。 これまでの権利書の管理は、「むやみに他人に渡さないこと」が重要であり、万一盗まれてしまったような場合にも、あるべき物がなくなっているのであるから、早期に気付き、対処することができる。 それに対し、登記識別情報は単なる番号であるから、それを知られ、メモされてしまっただけで、「権利書を盗まれた」との同じ状態になってしまう。しかも、盗まれたことに全く気付かない。登記識別情報の管理は、「むやみに他人に教えないこと、知られないこと」が重要になるだろう。 不動産登記法の改正は、市民生活にも影響を与える重大な問題を含みながら、マスコミ報道も十分になされておらず、ほとんどの人はそれを知らないのが現状だ。群馬司法書士会は、不動産登記の専門家として、来年三月の施行に向け、市民の皆さんに無用なトラブルや混乱がないよう、さまざまな形で新法のPRを行う予定である。 (上毛新聞 2004年7月22日掲載) |