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◎何をなすべきか考えて 人間は鳥のように空を飛んだり、魚のように水の中で暮らすことはできない。陸上ではというと、これもまた、人間よりも目、鼻、耳が利き、歯の強い、足の速い、力がある動物はいくらでもいる。 その人間が、地球上の億を超える陸、海、空の有りとあらゆる生物の頂点に立っていられるのは、なぜだろうか。それは言うまでもなく、他の生物たちにはない、発達した脳があるからだ。 十七世紀に生きたフランスの科学者、宗教思想家であったパスカル(一六二三―六二年)は、その著書『瞑想(めいそう)録(パンセ)』の中で、「人間は考える葦(あし)である」と言っている。この言葉はさまざまに解釈されているが、「人間は河原に生えている葦のように、一本では立っていられないほどの弱い存在であるが、思考をめぐらすことができる。いや、脳の活用を図るからこそ人間なのだ」と考える。 人間は、直立歩行することから始まって、空いた前足=手を使って、生活に必要なさまざまな道具を発明し、火を発見し、意思を伝達する言葉を作り、文字を考案してきた。これらにはすべて、人間の優秀な頭脳の活用がかかわっている。 そして人間は、馬よりも速い車、魚より長く泳ぐ船、鳥よりも高く速く飛ぶエアバスまで造り、その上でさらに地球の外にまで進出するようになったり、コンピューターを作って人間の頭脳の一部を機械に肩代わりさせたりするようになってきている。 だから人間は、まったく素晴らしい生き物なのだといえよう。 現代の人間に必要なさまざまな道具(物質文明、言語、宗教、哲学、思想など)と精神文明の上に暮らしている現代人は、ただその上にあぐらをかいているだけではいけない。 言葉や文字も含めて、日常生活に欠くことのできない道具は、すべて人間が作り出してきたものである。だから、人間はこの道具に対しては、使うものであって、使われるものであってはならないのである。しかし、残念ながら人間は未完成、未熟の部分がまだまだたくさんあり、いつまでたっても絶えない戦争は、その最たるものなのではないだろうか。 人間であるからには、自らの頭脳を常に鍛え磨いてこれを働かせ、今よりもっと快適で、便利で、平和な人間社会の構築に、大なり小なりに貢献できる人間であってほしい、なってほしいと期待するばかりである。 若者たち、少・青年期の真っただ中にいる諸君は、毎日膨大な量の知識、技能、態度を積み込むことができる柔軟な頭脳、体力を持っている。だから今、諸君は何をなすべきかを考え、行動してほしいと願うばかりである。 「少年老い易(やす)く、学成りがたし、一寸の光陰軽んずべからず」であり、「少年よ大志を抱け」である。 (上毛新聞 2004年7月13日掲載) |