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生活評論家・薬剤師 境野 米子さん(福島県在住)

【略歴】前橋市生まれ。千葉大薬学部卒。都立衛生研究所に勤務後、福島県に移住し、暮らしの安全について模索。著書に『安心できる化粧品選び』(岩波書店)『玄米食完全マニュアル』(創森社)など。

化粧水づくり



◎生命力ある自然の恵み

 先日、毎年恒例の古民家講座を開きました。普段は見学など一切お断りをしていますが、一年に一度だけ家を開放しています。今年のテーマは「自然化粧水」。原料はスギナ、ヨモギなど身の回りにあるものを利用し、草たちが持っている生命の輝きを感じてもらえたらと思い、企画しました。六十人の定員をはるかに超える申し込みがあり、多くの方たちの参加をお断りせざるを得ませんでした。自然化粧水が大きな関心を持たれていることを実感しました。

 化粧水の作り方ですが、まず原料は飲めるもの、食べられるものなら何でも大丈夫です。当日はクチナシの実、ハイビスカスの花、ラベンダーの花、そしてミント、レモンバーム、ドクダミ、スギナ、ユキノシタ、ヨモギの茎と葉など九種類を用意しました。

 もちろん農薬などの汚染がないものを選びます。植物からエキスを抽出すると、農薬は濃縮して化粧水に入ってしまいます。使う用具は化粧水を入れる瓶、材料を混ぜる五百ミリリットルほどの瓶、計量カップ、漏斗(じょうご)など、すべて煮沸消毒をしておきます。用意する材料は、保湿作用があるグリセリンと殺菌・清涼作用のある消毒用エタノールと精製水です。これらは薬局などで簡単に手に入ります。

 作り方ですが、原料五―十グラムをよく洗い、清潔な布で水気をふき取り、粗く刻んで瓶に入れ、五十ミリリットルの消毒用エタノールを加えて一晩漬けます。漬け液を茶こしやコーヒー用の紙フィルターなどでこします。これが植物の生命の雫(しずく)、エキスです。スギナやユキノシタなど、その輝くばかりの緑色に感激すると思います。このエキス大さじ二杯に、二十ミリリットルのグリセリンと百五十ミリリットルの精製水を加えて出来上がり。

 私は一年中、この手作り化粧水を楽しんで作り、使っています。冬でもクリーム、乳液、美容液などは使いません。肌が弱い人はエタノールではなく、ホワイトリカー、焼酎、日本酒などでもよいと思います。この場合、エタノールのような鮮やかな色は期待できません。さらに保存性は弱まるので、早めに使い切ることが大切です。

 また、敏感肌の人にお薦めの飲むお茶で作る化粧水の作り方ですが、ハイビスカスの花や紅茶、緑茶で一カップのお茶を作り、ホワイトリカー三十ミリリットル、グリセリン十―二十ミリリットルを加えて出来上がりです。

 市販の化粧水なら、通常二十から三十種類もの化学物質が配合され、保存料、界面活性剤、香料など肌の負担が多い物質も入っています。「自然化粧品」に使われているハーブエキスにすら保存料、安定剤、保香剤などが入っています。手作りの化粧水なら、保存性はないけれど、自分の肌に合ったものを使い続けていくことができます。お試しください。

(上毛新聞 2004年7月9日掲載)