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◎命の大切さ教えよう 長崎県佐世保市の小学校で、六年女児が同級生の女児に首など切られ死亡するという事件が発生しました。またしても、あってはならない想像をはるかに超えた衝撃的な事件で、痛ましくやり切れない思いがしています。亡くなった女児のご冥福(めいふく)を祈るとともに、二度とこのようなことが起きないことを、心から願っています。 今回の事件のように、安全であるべき学校、命の大切さを教える学校内での小学生による殺人事件は、少なくとも過去十五年間には発生していないようです。その意味で、今回の事件は特異なものかもしれませんが、昨年全国で十四歳未満の加害触法少年は二百十二人、被害者は百十一人で増加傾向にあり、悲惨な事件の低年齢化を考えると、子供たちに何らかの変化が起きているように感じられます。 今までにも、神戸市の連続児童殺傷事件(平成九年)、栃木県黒磯市のバタフライナイフによる女性教師刺殺事件(同十年)、連続した十七歳少年による殺害事件(同十二年)、そして昨年、長崎市で発生した幼稚園児連れ去り殺害事件等、重大事件が発生するたびに命の大切さ、心の教育の重要性が叫ばれ、各種対策が講じられてきました。 国においても「緊急アピール」や各種通知を出し、手引書や道徳教育のための「心のノート」等の冊子が発行されました。また、有識者による研究会議も設立され、中央教育審議会からも貴重な提言がなされています。 これを受け、県内各校でも指導体制を総点検し、道徳教育に力を入れるとともに小鳥や小動物の飼育、助産師による出前講座、赤ちゃんとの触れ合い、老人施設訪問、心の教育相談員の配置、カウンセリング体制の充実等を行ってきました。そして命の大切さ、他人への思いやり等の教育、子供の問題行動の早期発見や未然防止、地域や家庭との連携強化、体験活動の推進等が繰り返し図られてきました。 しかし、他県とはいえ、またしても事件が発生し、しかもごく普通の家庭の学業成績がよくてキレることもなかった普通の子供の想像を絶する犯行は、どうしても理解ができません。行政や学校の教育だけでは限界があるようにも思います。 しかし、再発させないためには地道でも道徳教育をしっかり行い、体験活動を豊かにして判断力や想像力、人間関係を円滑に保つ力を育成すること、すべての教育活動を通して善悪の判断を含めた基本的倫理観、規範意識、命の大切さ、思いやりなどの指導を繰り返し行うしかないように思います。 それと併せて、気持ちが不安定で衝動的に行動することをコントロールする能力が不十分な思春期の特色をよく理解する、一人一人の子供の状況を把握し、人間関係や問題行動に意を注ぎ、前兆情報が得られるよう子供との信頼関係をつくっておく、予兆段階から家庭と問題意識を共有し、関係機関との連携を深めておく、そしてこれらを常に検証しておくこと―なども大切なことだと考えます。 (上毛新聞 2004年7月7日掲載) |