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◎多くの人が陰で支える 一九九○年、障害のある子供を持つ親と理解ある先生とがバーベキューの集いを通してグループをつくり、子供たちが安心して活動できる場所づくりを夢見て、活動を続けてきました。長女の小学校入学を機に、特殊学級担任の松岡久枝先生と出会ったことがきっかけでした。そして九八年、利用者が生き生きと毎日を過ごす福祉作業所「いぶき」が誕生し、地域の中の一つの拠点となりました。 現在、「いぶき」で行われている作業は、大きく分けて三つあります。一つは地元企業や会社からの受注作業(簡単な手作業)、もう一つは昨年七月にスタートした流木を使った木工製品の製造、そして三つ目は自主製品である焼き菓子製造です。私は、その焼き菓子づくりの仕事を担当して約五年間、立ち上げからかかわってきました。〈夢のあるお菓子づくりを製造から販売まで自分たちの手で…〉という思いからスタートしたのです。 モデルとなったのは、横浜市にある地域作業所「ぴぐれっと」です。「ぴぐれっと」との出合いは九六年、いぶきの仲間でドキュメンタリー映画『奈緒ちゃん』の自主上映会を開催し、その後、舞台である横浜市の施設を見学しようと映画の主人公に会いに行ったことが始まりです。この年はいぶきの仲間にとって、大きな転機の年でもありました。 てんかんと知的障害を併せ持つ主人公の奈緒ちゃんとお母さんに会い、仲間たちで造り上げた作業所「ぴぐれっと」を見学させてもらいました。その小さなプレハブの建物の部屋の中に一歩足を踏み入れ、所狭しと置かれていたオーブンや冷蔵庫や道具の数々を見た瞬間、「これなら自分にもできるかもしれない」と思ったのを、今でもよく覚えています。 「いぶき」が設立してすぐに、お菓子づくりが得意な友人二人を呼んで、オーブンの試運転をしたところ、とてもおいしいクッキーが焼け、みなで驚き、感動しました。 本格的に展開するにあたっては、大きな力となった三人の協力者がおります。一人は、販売を担当すると申し出てくれた渋川駅前通り・飯塚米穀店のオーナー夫人で、「いぶき」製品の主力販売店となっています。もう一人は親友のデザイナー浦野祐子さんで、「いぶき」のロゴマーク、シール、パンフレットに至るまで、すべての作製をボランティアで引き受けてくれました。それからもう一人、ホームメードの洋菓子店を経営している主人の友人を講師として招き、クッキーづくりを教わりました。 こうして三人の協力のおかげで、自主製品づくりへの取り組みが始まったわけです。自然の素材にこだわった手づくりのクッキーは予想を超える展開となっていますが、これは利用者の方々やスタッフの努力、そして「いぶき」をサポートする仲間や地域の皆さまのご支援のたまものと感謝しています。今後も「いぶき」の発展を願いつつ、私自身、障害のある方の自己選択・自己決定のための援助ができる社会の一員でありたいと思っております。 (上毛新聞 2004年7月4日掲載) |