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◎車社会変えるツールに この四月の人事異動で、群馬の地方事務所から東京の本省に勤務している。新しい所属は、高度道路交通システム推進室というところである。「高度道路交通システム」は「ITS」の日本語名である。交通の大部分を担っている道路交通を、情報化という切り口でユーザーにとって便利なものにしていこう、というもの。別の言い方をすれば、いかにも前近代的なイメージのある道路と情報とを結び付けて、先進的なものに仕立て上げ、世の中の役に立てていくものである。 もうだいぶ、おなじみとなってきたカーナビ、渋滞情報を車に提供するVICS、高速道路で止まらずに料金が払えるETCなどは、ITSの一部をなすものである。いずれも、カタカナ、またはアルファベットであるため、流行や先端のものというイメージがなかなか抜けないが、実は生活にかなり浸透しつつあり、確実に地域社会を変えようとしている。 例えば、全国で見れば五台に一台の割合で普及しているカーナビ。助手席からの道案内は、往々にしてトラブルのもとにもなるが、カーナビの場合は分かりやすく、かつ淡々と道を案内してくれる。初めての場所では大変重宝するし、普段慣れている道でも安心感が違う。ある調査によれば、高齢者ほどカーナビに対する評判がよいようである。 群馬は言わずと知れた車社会である。老若男女を問わず、車が手放せない。自動車依存ではなく、公共交通への転換なども方向性としては重要ではあるが、当面どうするかという視点も無視はできない。高速道路のネットワークも充実しつつあり、都市間だけではなく地域内の道路としての活用も今後増えてこよう。そうなると、ETCによりノンストップで料金所を通り抜けることの意味が、一層増すことにもなる。 群馬などの地方都市では、車という道具が身近にあることで日々の生活が営まれている。女性が家事もこなしつつ勤めに出たり、高齢者が社会活動に参加することができるのも車のおかげといえよう。誰でも、どこでも、いつまでも安全に車を利用できるようにサポートしていくことが行政に求められている。 この際、強力なツールとなるのがITSである。道案内のみならず、危険個所での警告サービスや、前方車との車間距離が短くなった場合のブレーキ制動などもすでに実用化されている。女性や高齢者にとって苦手なことが少なくない車庫入れを、自動的に行ってくれるものも誕生している。 車の便利さの代償である交通事故や環境負荷も、こういったITS技術を導入していくことで、着実に改善されていくことが期待される。バスなどの公共交通の活性化にも欠かせない。ITSは、これからの車社会を変えていくキーワードになると考えている。 (上毛新聞 2004年7月1日掲載) |