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藤岡市民太鼓会計 岡村 和代さん(藤岡市藤岡)

【略歴】文化服装学院服飾専攻科卒。会社員を経て家業の婦人服地専門店に。群馬青友会会長、藤岡商工会議所青年部・会員委員会、経営研修委員会の委員長などを歴任。2001年から現職。

気付くということ



◎意識することで変わる

 太鼓をするようになってから、分かったつもりでいたのに、実はきちんと理解していなかったことに気が付きました。例えば、太鼓をたたいていて、ある時、急に左手がとても大事なのだと気が付きます。今までも分かっていたはずなのに、本当に“気が付く”のです。そうすると、流してしまいがちな左手で大切にたたくようになってきます。

 また、ある時、急に小さい音ほど大事なのだと本当に気付くのです。そうすると、バチ先に全神経を集中させて小さい音を表現するようになってきます。当然、構え方も違ってきます。それが、分かったつもりでいたことばかりなのです。曲を覚えたのと、たたけるのは違います。速くて細かいリズムほど力を抜いて指の動きを生かすなど、何年も太鼓をしている方にとっては当たり前のことでも、自分で気が付いて常に意識しなければ変わっていけないのです。

 でも、こうして気が付く瞬間がたまらなく好きで、目の前がパーッと開けたようになり、また新鮮な気持ちで太鼓と向き合えます。こうして、さらに太鼓にはまっていくのです。今までこれほど基礎が大事と思ったことはなく、いくら基礎練習をしていても飽きないというのも他にはないことです。こうした思いを味わわせてもらえる太鼓と出会えたことに、いつも感謝しています。

 また、いつごろからか、「ありがとう」という言葉をあまり言っていないことに気付きました。すべてを、つい便利な「すみません」で済ませていました。商売では毎日言っていても、あらためて人に言うのは照れくさいもので、でも自分に言われるとうれしいものです。それからは意識して使うようになりました。

 特に太鼓の子供たちには、お礼を言われるうれしさをいっぱい味わってほしいので、何か頼んだら必ず「ありがとう」の言葉を添えます。何となく、子供の動きも違ってくるように感じるから不思議です。どんな時でも子供は大人のすることを見ています。影響を与えるのは身近な大人ですので、言葉も行動も気を付けたいものです。

 最近は太鼓のコンサートへ行く機会が増えました。いろいろな太鼓を組み合わせてのリズム乱れぬバチさばき、どれも刺激を受けることばかりです。たたけば音が出る太鼓ですが、バチの種類やたたき手が変わり、音の強弱、リズムのとり方によって無限の可能性が広がり、曲が生み出されます。あんなふうにたたけたらと、遠い目標でも夢が膨らみます。

 今、和太鼓はとても人気があり、どの会場も人で埋めつくされています。そんな中で残念なのは、演奏中、必ず客席から携帯電話の着信音が聞こえることです。開演前に注意の放送があるにもかかわらずです。電話に出られるわけではなく、周りは迷惑し、自分は恥ずかしい思いをするのに、どの会場でも一回は聞こえてきます。

 最高の演奏を聴きたいと思ったら、聴き手も配慮すべきです。コンサートに限らず、もう少し周りに気配りすることを心掛けていくのも大事だ、と気付いてほしいものです。

(上毛新聞 2004年6月19日掲載)