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◎先人らの原点に立とう 責任や義務とは何だろうか。最近よく自己責任という言葉を耳にします。国民として県民として、地域の住民として、それぞれの責任はどれも重いものであることに違いはありません。そして、それぞれの人がその地域で責任と義務を果たすことで、権利を主張できるのだと、今更のように感じています。 最近になって私は、高齢、過疎地域の住民として、どのようなことにかかわりを持ち、どのように責任と義務を果たしていくべきかを考え、思い悩んでいます。それは市町村合併が目前に迫り、先人から受け継いできた伝統や地域性をどう守り、後世にどのように伝えていくか、また、合併によって地域性や伝統が失われはしまいか、といったことです。そうは言っても、合併に反対をしているわけではありません。 伝統や地域性とは、その地域の成り立ちや自然の風土の中で芽生えてきた産物であり、その地域に生きる者の夢と現実であって、私たちの心そのものだと思います。流れの速い時代の中で新しさを吸収し、現代を生き抜いていくことも大切ですが、大事な何かが失われていくような気もしています。 そんなときだからこそ、先人がそれぞれの地域文化をどのような必要性に応じて形成してきたかを、いま一度、原点に立ち戻って考えるべきではないでしょうか。今からでは遅いと思っているとすれば、それはそこに住む人々があきらめているからではないかと思います。 地域経済や住民生活には、祭りや神事などの歳時が深く結びつき、地域が発展してきました。それもこれも失われたら、元通りにするには想像以上の努力が必要で、取り戻すのが不可能なことさえあります。私の町でも、そのような地区ができつつあります。地域の問題は、住民の問題として考え、行動することが基本であり、それによって官民一体が図れるのではないでしょうか。 官の中には、自分たちは住民のことを思って仕事に打ち込んでいるのに、住民は何を思っているのかといった、おごりはなかったでしょうか。また、住民の側では意見は言うが、行動を起こさないといった事実はなかったでしょうか。市町村の課題が山積する中で、官と民が互いに批判や中傷を繰り返してこなかったでしょうか。今こそ、官民一体で行動すべきときです。 しかし、行動するとなると、一抜け二抜けとだんだん少数になり、他人事のようになってしまうことがあります。地域や地区で必要なことであって、われわれに課せられた問題だとすれば、今からでも遅くはありません。スタートラインに立ったと思い、行動していくべきです。 市町村合併によって、地域や地区がなくなるわけではありません。発展に努力し、地域性や伝統を後世の人々に伝えていくことを怠らず、しっかりとやっていくことが、地域に根ざす者としての責任と義務であろうと思います。遠くから見ても近くから見ても、地域がいつまでも美しくあるために…。 (上毛新聞 2004年6月12日掲載) |