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◎正社員化へ税制改正を 厚生労働省の最近の月例労働経済報告によれば、日本経済は設備投資と輸出に支えられ「着実に回復している」としている。 それは、東証一部上場企業の今年三月期の連結経常利益が二十兆円となり過去最高を更新したこと、株価の上昇、大手企業の採用計画の増、有効求人倍率ならびに失業率の改善等から、その裏付けができる。 しかし、その実感がわかない。完全失業率は5%台から4・7%へと低下したが、依然として失業者は多く、企業倒産等の情報も少なくないからである。景気の回復基調の中で、企業の求人は増加傾向にあることは確かだ。その増加の中身は新卒者が主力対象であり、フリーター、リストラ失業者等は二次的対象といえる。 最近の各種求人データ等を見ると、臨時社員の比率が高い。今、企業が必要としているのは高賃金の労働者でなく、安い労賃のパート等の労働者なのである。現在、景気の回復がまだ本物であるか疑わしい中で、正社員採用に踏み切ることを企業経営者は躊躇(ちゅうちょ)している。 人件費軽減が今の経営者の経営哲学となっているからである。また、企業はパート、アルバイト等の従業員比率を増やしている。付加価値に占める労務比率を縮減するためである。 マスコミ報道によると、大手スーパーでは全従業員の八割以上がパートとのこと。今や、どの職場でもパート等の従業員は存在し、増加傾向を示している。 パート等は一般的に年金、健康保険、雇用保険等に未加入でボーナスなし、いつでも解雇される労働者なのである。ここに大きな問題が内在している。九百九十万人いるパート労働者の中には、フリーターが含まれている。そのフリーターは今や四百十七万人もいる。フリーターは満十五歳から三十四歳までの人で、男性は継続就業年数が一―五年未満の人、女性は未婚で家事も通学もしておらず、アルバイト等の仕事を希望する人をいい、年収は百万円程度。 これらの人がパート等で三十、四十歳と年齢を重ねた場合、何が発生するか。それは結婚率の低下等により、少子化に拍車をかける。そして、近未来的には教育産業、住宅産業、その他の業界に多大の影響を与え、倒産、破産等が相次ぎ、大不況の到来が予想される。 片や、国家、地方財政も税収不足として表われ、運営に支障が出る。このような問題点を改善するため、企業、政府は次の行動展開をすべきであり、フリーターは意識改革が必要である。 まず、企業等はパート等の採用を極力縮小し、正社員として採用する。政府は企業等の臨時社員比率を逓減させるべく税制を改正(例えば、所得税で配偶者特別控除を廃止したり、パート等の厚生年金、雇用保険加入の義務化等)し、企業等へ臨時社員比率低下等への行政指導を徹底化する。フリーターについては、行政で教育研修を実施し、自立化を援助する。 こうしたことを実施すれば、将来の日本経済の衰退、縮小は回避され、社会システムも安定を保って、日本の未来に明るい陽光が射すのではないだろうか。 (上毛新聞 2004年6月6日掲載) |