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国土交通省ITS推進室企画専門官 森山 誠二さん(東京都世田谷区)

【略歴】岡山県生まれ。東京大工学部卒業後、1986年に建設省(現国土交通省)入省。中国地方建設局、新潟県庁、本省道路局、総合政策局を経て高崎河川国道事務所長。今年4月から現職。

NPOとの連携



◎新たな公共の担い手に

 群馬県は全国有数のNPO(民間非営利団体)先進地域である。人口あたりのNPO法人は東京都、京都府に次いで、第三位となっている。自治体などによる支援や協力関係も整いつつある。新しい分野でもあり、市民ニーズに応える意味からも、こうした流れを、行政側から支援していくことが重要であることはいうまでもない。

 しかしながら、行政の事情でいえば、税収も見込めない中、どこを切り詰めていくか、どの自治体もこのことに腐心している。一方では、行政に対するニーズはますます増えていく傾向にあり、とてもすべてに対応することは困難なのが実情である。

 つまり、市民側が求めることと、行政側ができることとのギャップがどんどん広がってきている、ということである。行政は何にも対応してくれない、住民はクレームばかり言ってくる。両者の溝は深まるばかりである。

 こういう状況は、地域にとって大変不幸なことである。市民と行政の線引きを変える。その前提として、個人と公共の線引きの見直しが必要となっている。自分勝手のままでコミュニティーは成立しない。公共のために個人は何をなすべきか。さらに、公共という分野における行政の役割は何なのか。公共イコール行政ではないことを再確認することが必要である。

 公共分野を行政がすべてカバーすることは到底不可能であるし、またそうするべきでもない。そこで活躍が期待されるのがNPOやボランティアである。行政がカバーできない公共分野を、広い意味のNPOが担当する。地域のことは地域で行う。こういった原則ルールを足元から実行できるのは、こうしたNPOをおいてほかにはないだろう。

 福祉、教育、環境といった分野でのNPOの活躍が目に付く。さらに活動のすそ野を広げ、公共という広い分野をすき間なく埋め尽くしてほしいものである。その一つに道路や河川といった社会基盤の分野がある。これらにお世話になることなく、日々の社会生活は成り立たない。朝起きて、スイッチを入れ電気を利用し、蛇口をひねり水を利用し、家から外に出て道路を利用する。

 社会基盤の分野は、日常生活そのものであるだけに、NPOに期待するところは大きい。NPOとどのように連携し、役割を分担していくのか。社会基盤行政をどのように高度化し、またNPO活動をどう支援することができるのか。行政側としてもさまざまな取り組みを進めていくべきであるし、NPO側もいろいろなチャンネルを開拓していくことが期待される。

 「官と民」「公共と個人」といった二極構造に陥ることなく、曖昧(あいまい)性を大切にしつつ、公共の福祉の増進という大儀名文を実現していく。NPOと行政が、より良いパートナーシップを築いていくことができるよう、双方のたゆまぬ努力が求められている。これにより、生き生きとした活力ある地域づくりが可能になると信じている。

(上毛新聞 2004年5月31日掲載)