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◎対応できる力伸ばそう 「さあ、ボールを蹴(け)ろう」。私が小暮幼稚園長になって二年目。園児たちにサッカーを教え、幼稚園児たちのサッカー大会に出場しようと、ミニサッカーゴールを一対、ボールやゼッケンもそろえて指導を始めた。私は、中学や大学でサッカーの指導を手掛け、初心者の指導にも精通していると自信をもって臨んだ。 園児たちは楽しそうにボール遊びを始めたが、十分もするとブランコや滑り台に行く子が出て、三十分後には数人しかいなくなってしまった。七十歳になる私の体力、気力の衰えと、子供たちの理解が不十分で、指導の仕方、遊ばせ方の勉強不足も重なり、とても駄目だとあきらめてしまった。今でも子供たちは、好きな子が自由遊びの時間にボールを蹴って遊んでいるが、チームをつくって大会に出る夢は絶たれたままである。 でも、幼稚園の先生方の指導は一味違っている。目標に向かって、コツコツと気長に指導していく。運動会の演技、中でも鼓笛隊の指導などは、個別指導やグループ指導、全体の練習と根気強く繰り返し、何とか見られるようにしてしまう。発表会でも歌や踊り、ミュージカルなど、年少、年中、年長と発達に合わせて仕上げていく。縄跳び大会、カルタ大会と行事に合わせて家庭と協力しながら伸ばしていく。歌や絵、物づくりなどをさせながら、子供同士の遊びや躾(しつけ)などを通して、年とともに成長していく姿が本当にかわいいし、ほほ笑ましい。 入園式後の写真撮影で、ちゃんと椅子(いす)に座っていられず泣いてしまう子、親から離れられずダッコされたままの子など、さまざまだが、三年たった卒園式では皆、立派に修了証書を受け取り、卒園していった。天使のような子供たちの姿を見て、毎日、幸せを味わっている。 この子供たちの将来は? 小暮幼稚園の園児は、おおよそ三分の一が農業や自営業の子、三分の二がサラリーマンの子と、園児の将来像は多様であるが、どんな場面でも対応できる体力、知力、徳育などの基礎をつくっていきたいと願っている。この子供たちが成長する二十年先、五十年先が平和で幸せな世の中であることを祈っている。 幼稚園は集団としての教育の最初であるが、教育はこの後も長く続く。サッカーでいえば、小学校での指導者から中学・高校の指導者と、コツコツと絶え間のない指導や家庭の協力によって、子供たちの才能が伸ばされていく。そうした中で、フランスワールドカップ代表の山口素弘、小島伸幸両君や、二〇〇二年ワールドカップ代表の松田直樹君などが現れた。 県内からJリーガーが輩出している現状を見るにつけ、子供たちの指導の重要性を知り、指導者の努力に対して心から敬意を表したい。送り出した園児たちが、各方面のよき指導を受けながら、本人のたゆまぬ努力の積み重ねで、よりよい人間として各方面で活躍してくれることを願っている。 (上毛新聞 2004年5月27日掲載) |