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◎受ける側に有利な改正 離婚の際に定められる子供の養育費は、「子供一人につき月々何円を支払う」という取り決めにするのが一般的である。最近、この月々支払うべき養育費を滞納するケースが増えている。 養育費の支払いを受ける側としては、滞納があった場合、強制執行の手続きにより相手方の給料を差し押さえ、その回収を図ることが多い。このような養育費の強制執行手続きについて、本年四月一日に法改正があり、次に掲げる二点が変わった。養育費の支払いを受ける側(多くの場合、離婚によって経済的苦境に立つ側)にとっては有利な改正であり、朗報といえよう。養育費の滞納にお困りの方は、この機会にぜひ、お近くの司法書士に相談していただきたい。 (1)差し押さえ可能な金額が増えた 給料を差し押さえる場合、これまで手取額の四分の一の金額までしか差し押さえが認められなかった。しかし、法改正によって、今後は手取額の二分の一の金額まで差し押さえが認められる。 例えば、月々四万円ずつ支払うべき養育費につき十カ月間の滞納(合計四十万円)があり、相手方の給料(手取額毎月二十万円)を差し押さえた、というケースを想定してみよう。これまでは、毎月五万円(手取額の四分の一)ずつ、八カ月にわたってこの四十万円を回収しなければならなかったのだが、今後は、毎月十万円(手取額の二分の一)ずつ四カ月で回収できるようになったのである。 (2)一度の手続きで将来にわたって給料の差し押さえができるようになった 前述のケースにおいて、当初滞納となっていた四十万円の全額を回収したときには、強制執行手続きは終了するのが、これまでの取り扱いであった。しかしながら、養育費の支払い義務は毎月新たに生じるものである。四十万円を四カ月かけて回収する間に、さらに四万円×四カ月=十六万円が滞納となってしまう。 この滞納分十六万円について給料を差し押さえるためには、また新たな手続きを取らなければならなかった。そして、その後さらに滞納があった場合には、さらに新たな手続きを取らなくてはならず、相手方が月々の金額をきちんと支払ってくれるようになるまでは、一定の周期ごとに、その間の滞納分を差し押さえるという手続きを何度も、繰り返す必要があったのである。 これは、法律が「将来受け取るべき養育費」については、差し押さえを認めなかったためであるが、このたびの法改正で、この差し押さえが認められるようになった。つまり、何度も手続きを繰り返さなくても、一度の手続きで、将来にわたり相手方の給料を差し押さえることができるようになったのである。 前述の(1)(2)はともに、「養育費」債権について「給料」を差し押さえる場合の取り扱いであり、貸金その他養育費以外の債権についての場合、給料以外を差し押さえる場合には適用がないので、ご注意願いたい。 (上毛新聞 2004年5月21日掲載) |