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県スポーツ振興事業団事務局長 海野 俊彦さん(伊勢崎市福島町)

【略歴】旧伊勢崎高、日本体育大卒。伊勢崎商高、伊勢崎工高などで陸上競技部指導。県高体連理事長、藤岡高教頭、太田東高校長などを歴任、県教委文化スポーツ部参事を務めた。伊勢崎市陸上競技クラブ会長。

総合型スポーツクラブ



◎地域住民の交流の場

 「いつでも どこでも だれでも 楽しいスポーツの町ふくの」をスローガンに活動を展開している富山県福野町の「ふくのスポーツクラブ」は、全国に先駆けて総合型地域スポーツクラブ(以下「総合型クラブ」)を設立し、地域スポーツ振興体制の拡充に取り組んでいます。クラブ会員の対象範囲は事業の広域性をかんがみ、福野町全域と近隣市町村の希望者を受け入れています。現在、約三千五百人が年会費を納入してクラブ経営を支えており、組織もNPO(民間非営利団体)法人となり、活動を実践しています。

 ここで、皆さんになじみのない総合型クラブ育成推進の背景について触れてみますと、わが国では従前より学校体育がスポーツ活動の中心的役割を担ってきた歴史的側面があります。しかし、少子高齢化社会の進展、地域コミュニティーの弱まり、青少年の問題行動や子供たちの社会性の低下など、多様な問題が発生しています。総合型クラブは老若男女、誰もが参画できる地域住民の交流の場であり、また多くの住民のスポーツ活動の場でもあります。活動を通して家族間の触れ合いや世代間交流、青少年の健全育成、子供たちの居場所づくり、地域教育力の再生など、大きな役割を果たすことができると期待されております。

 従来型のスポーツ活動は、大半が単一種目で、参加者も限定されがち。さらに、ゲーム中心、拠点施設の不足など、地域で気軽にスポーツを実践する環境に恵まれませんでした。これに対し、総合型クラブは地域住民が自主的、主体的に運営にかかわり、居住地にある多種目、多世代、多志向のさまざまな地域住民のニーズに応じてスポーツが選択でき、親しむことができる地域住民のためのスポーツクラブです。

 このようなシステムを活用して、国内にも多くのスポーツクラブが設立されており、本県では「新町スポーツクラブ」や「おおたスポーツ学校」がそれぞれ特徴ある独自な活動を推進し、注目を集めています。

 地域に根差した自主運営型の総合型スポーツクラブの設立や育成、活動実践のためには、クラブマネージャーの存在が不可欠です。クラブマネージャーは地域スポーツ関係者の支援を得て、運営委員会の立ち上げや指導者の組織化、拠点施設の確保、会費収入等の財政基盤整備などの職務能力が要求されます。

 現在、県スポーツ振興事業団では総合型クラブの設立育成に取り組んでいる地域、人材に対して多面的に支援を行っています。四月からは新たな支援機関として「県広域スポーツセンター」を設置しました。広域スポーツセンターは、多くの皆さんが気軽にスポーツ活動を実践する環境づくりのための支援を進めていくものであり、会員やクラブ同士の交流や情報の発信基地となります。

 関心のある皆さんがクラブマネージャーを目指し、従来のチームづくりのクラブでない地域のニーズに合ったスポーツクラブの立ち上げに挑戦していただきたいと思っています。

(上毛新聞 2004年5月8日掲載)