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生活評論家・薬剤師 境野 米子さん(福島県在住)

【略歴】前橋市生まれ。千葉大薬学部卒。都立衛生研究所に勤務後、福島県に移住し、暮らしの安全について模索。著書に『安心できる化粧品選び』(岩波書店)『玄米食完全マニュアル』(創森社)など。

野草茶



◎副作用なく優しい効果

 福島では、四月半ばに桜が満開となり、ツバキ、シャクナゲ、コブシ、ボケ、ジンチョウゲなどが一斉に花開き、野原はオオイヌノフグリの瑠璃(るり)色に覆われています。畑の方も忙しくなりますが、野草茶作りの季節が始まりました。

 膠原(こうげん)病になったとき、あれほどおいしく飲んでいたコーヒーや緑茶が飲めなくなりました。無理して飲むと、胃がムカムカしてゲップが出てきました。医者から「カフェインが多い緑茶やコーヒーではなく、飲むなら水、白湯、柿茶や野草茶に」と言われました。確かに、水がわく家に暮らし、足元にはわんさか野草があるのですから、コーヒーや緑茶をわざわざ買う必要はないのだと悟りました。以来、わが家で毎日飲むお茶は、野草茶です。

 ツンとさわやかなミントの香りがするカキドオシ、白緑の葉裏を輝かせるヨモギ、黄緑色のすっきりと立ち上がるスギナなど、足元にある雑草でおいしいお茶が作れるのです。その気になれば、オオバコ、ハハコグサ、ツユクサ、ユキノシタ、ドクダミなど、お茶にできる野草は身近にたくさんあります。

 作り方は簡単です。まず多種類の野草を採ります。漢方薬は通常二、三十種類もの薬草の組み合わせで作られていて、一種類の薬草だけでは作りません。世界は多彩な草たちであふれているのですから、家族みんなでおいしく飲むためにも、できるだけ多種類の野草で作る方が自然です。

 採った野草は、日光の強い日差しを避け、陰干しで葉や花の色と香りをできるだけ保ち、カラカラに乾燥させることが大切です。陰干しでないと、薬効成分がなくなってしまいます。また、生乾きだと保存中にかびてしまうので、しっかり乾燥させることがポイントです。

 とりわけドクダミのような梅雨の季節に摘むものは、かびやすいので要注意です。何度もかびさせた苦い体験から、庭の汚染のないところで摘める利点を生かし、採った野草は泥だけ落とし、洗わずに干しています。十分に乾燥したら、袋に入れ、缶にしまい、一年間保存します。二年、三年と保存する必要はありません。次の年にはまた新しい野草が摘めるのですから、そのサイクルで飲むのがもっとも理想的と思っています。

 飲み方ですが、ステンレス製のやかんまたは土瓶に多種類の野草(最低五種類くらいはあった方がおいしい)と煎(い)った玄米を入れ、沸騰したら弱火にして三十分間煮出し、夏は冷蔵庫で冷やし、冬はポットに入れて熱いお茶を飲みます。

 また、ヨモギには体を温める作用があり、スギナには解熱や利尿効果がありますが、そんな「効果」に心を煩わされずに、毎日おいしく飲むことの方が大切です。野草茶は、強力な効果がない半面、副作用がなく、一年たったら、知らず知らずに血液がサラサラになり、尿の出がよくなっていた、そんな優しい効果が野草茶の真骨頂なのですから。

(上毛新聞 2004年5月3日掲載)