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群馬アレルギーぜんそく研究所長 黒沢 元博さん(邑楽郡薮塚)

【略歴】群大医学部卒。医学、薬学博士。米セントルイスのワシントン大内科学免疫アレルギー部門フェロー、弘前大と秋田大助教授などを歴任。アレルギーなど研究のAAAAI国際コミュティ日本代表メンバー。

ぜんそく



◎知識を学び自己管理を

 群馬アレルギーぜんそく研究所の建設工事が進んでいる。この研究所は、全国に例のない医療法人によるアレルギーぜんそく研究のための、初の本格的研究所である。

 ぜんそくは英語で「asthma」という。この言葉は短い息、息切れ、喘(あえ)ぎを意味する古代ギリシャ語に由来する。人類は古代ギリシャの昔から、ぜんそくになっていたと想像できるほど、ぜんそくとの付き合いは長い。

 ぜんそくは遺伝するアレルギーの病気で、子供のうちにぜんそくになると考えられてきた。しかし、血縁者にぜんそくになった人がいなくても、最近、中高年になってから初めてぜんそくになる人が急増している。

 ぜんそくは、鼻から肺への空気の通り道にある気管支が収縮する病気で、その収縮は治療により回復するとイギリスで定義されたのが、一九五九年であった。この定義に従えば、人はぜんそくでは死なない。しかし、実状は異なる。アレルギーの病気で、時として命を落とすのは、ぜんそくだけである。ぜんそく死の原因は、気管支に粘っこい痰(たん)が多量にたまるためで、気管支の収縮のためではない。

 ぜんそくは、三つの状態をもつ病気であることが分かってきた。第一は、これまで言われてきた気管支の収縮、すなわち気管支のけいれん。第二は、痰や微熱が出て、かぜと間違いやすい状態(炎症)。そして第三は、気管支が刺激に対して敏感に反応する状態(気道過敏性)である。

 せきや痰、息苦しいなどの呼吸症状があると、安易にぜんそくと考えがちだ。しかし、ぜんそくかどうかは、専門医のいる医療機関で、詳しい検査を受ける必要がある。残念なことに、十分な検査を受けられないまま、症状を抑えるための薬を処方されることが多い。

 気管支が収縮し、息がぜいぜいするのを抑えるだけでは、ぜんそくは治らない。かぜと間違えて、かぜ薬を乱用しても症状は治まらない。日常生活は普通に送れても、軽い運動や天候の変化、ストレスを感じたときなどに、せきをしたり、のどがいがらっぽくなったら要注意。気道過敏性である。

 気管支の収縮を軽くするための吸入薬は、使い過ぎると心臓に負担をかける。そればかりか、徐々に効果がなくなり、痰を濃くして窒息に近い状態をつくる。一方、気管支の中を浄化し、気管支の炎症や過敏性を改善する目的で、ステロイドの吸入薬が広く使われている。しかし、最近の強力なステロイド吸入薬は、ステロイドを飲んだときと同様の副作用を起こす可能性が指摘されている。状態が安定すれば、軽いステロイド吸入薬で十分なことが多い。

 ぜんそくの人が日常生活を快適に送るために最も重要なことは、ぜんそくのことをよく知ること、薬の正しい使い方を理解すること、そして、ぜんそくで苦しむことのないように自己管理することである。そのためには、ぜんそくの専門医を大いに利用し、正しい知識を学び、役立ててほしい。

(上毛新聞 2004年5月1日掲載)