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(株)ちばぎん総合研究所代表取締役社長 額賀 信さん(神奈川県川崎市)

【略歴】東京大法学部卒。日本銀行に入行後、オックスフォード大留学、経済学修士卒。神戸支店長を経て退職。著書に『「日本病」からの脱出』など。経済誌への寄稿、テレビ出演などを通して持論を展開。

スポーツ育成



◎観光に大きな波及効果

 前回の本欄では、スペインの観光政策を紹介した。今回は、そのスペインの話をもう少し続けてみたい。スペイン南部の観光州であるアンダルシア州では、観光とスポーツを合わせた観光・スポーツ庁が、観光とスポーツ両者の振興を図っている。スペインでは、観光とスポーツは地域振興の両輪と考えられているのである。

 スポーツは、地域の活力を高めるだけではない。スポーツイベントは、地域に多くの交流人口を引き付ける。スペインでは、スポーツは観光振興にも役立つという観点から、地域を挙げて各種のスポーツイベントを盛り上げ、観光客誘致にも活用している。だから一つの行政組織で、観光政策とスポーツ振興の両者を整合的に企画・実行しているのである。

 確かに最近のスペインのスポーツは、サッカー、ゴルフ、テニス等強い。サッカーでは、プロリーグトップで人気選手ベッカムが所属するレアル・マドリードが昨年夏、日本をはじめアジア各国を回ってスペイン・サッカーのファンを増やしたことは記憶に新しい。ゴルフではガルシア選手が有名である。これらの試合では、国の内外から多くのファンが観光客として観戦に訪れるから、地域に与えるスポーツの波及効果は絶大である。

 話はスペインからややずれるが、プロ野球の松井秀喜選手がメジャーリーグのニューヨーク・ヤンキースで大活躍している。昨年の一月十四日、その松井選手の入団会見では、ニューヨーク市のブルームバーグ市長が特別参加したが、これにも、スポーツ振興を通じて、日本人観光客を含む多くの観光客にニューヨーク市を強くアピールする狙いがあったものと推測される。特にニューヨーク市では二〇〇一年九月の中枢同時テロ以来、観光客が減っている。観光振興はニューヨークという巨大都市にとっても、重要課題なのである。

 スポーツは、地域の特色を分かりやすく訴える大きな力を持っているし、米国やスペインといった観光先進国の自治体責任者は、地域の経済活力が交流から生まれることをよく理解し、あらゆる機会をとらえて交流人口を引き付けるため、自ら先頭に立って行動しているのである。

 これからの群馬県を展望しても、観光は重要な役割を担うだろう。その場合、スポーツは人を引き付ける大きな力を持っている。スポーツが盛んな地域は人が集まり、観光振興も容易だろう。例えば、お隣の新潟県では、今シーズンからアルビレックス新潟がJ1に昇格した。これまでの試合を見ても、集客力が高く、大きな波及効果を生み出している。

 何もサッカーである必要はないが、特色あるチームが活躍できるようなスポーツ育成は、これからの地域づくりで欠かせない視点である。スポーツも観光も、一日ではその担い手は育たない。腰を据えて、その育成に努める必要が急速に高まっているように思う。

(上毛新聞 2004年4月7日掲載)