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◎誰もが外出の自由を バリアフリー社会が進んでいます。住宅では段差がなく、子供や障害者、高齢者に安全な家とされています。公共交通に関しても、平成十二年十一月に交通バリアフリー法が施行されました。 この法律は、だれもが移動や外出する自由を保障するものです。特にハンディのある障害者や高齢者などの外出手段の確保のため、公共交通機関を利用する場合に障害となっている階段などを改善し、自立と社会参加の促進を目的に成立しました。 駅にはエレベーターやエスカレーターが設置されたり、道路では段差がなくなるなど、私たちの身近なところにも変化が見られます。駅員が車いす利用者を介助したり、低床バス(ノンステップバス)が出現したのもこの法律のおかげです。 ハンディがあっても、どうにか駅やバス停まで行ける人は行動範囲が広がり、まことに便利になりました。しかし、駅やバス停まで行くことが困難な人には、電車やバスは有効な移動手段とはいえません。これら移動困難な人には、誰かに付き添ってもらうなどの支援を受けながら、自動車による家から目的地までのドアからドア、時にはベッドからベッドでなければ、外出することは不可能です。 これら外出や移動の支援としては、社会福祉法人などが施設のデイサービスなど特定の利用者に行う送迎や、各地の市区町村や社会福祉協議会、NPO(民間非営利団体)法人やボランティア団体などが行っている通院目的の送迎、および買い物や趣味など社会参加の拡大を目的とした移送サービスなどがあります。社会福祉協議会、NPOボランティアの移送サービスは全国で約二千五百団体が活動しており、移動の足として高齢者や障害者のさまざまな要望に応えています。 しかし、これらの試みは有償での運送を禁じている道路運送法に違反することになり、これが障害となり、外出や移動が困難な人の要望に応えきれないのが現状です。 移送サービスの特徴は、きめ細かな準備にあります。(1)利用者の身体能力や障害の程度、注意点など事前確認(2)利用者の自宅の様子や目的地の状況確認(3)安全に乗下車するための支援・介護方法を決定(4)実際に移送を担当する人を紹介。このようなプロセスを踏みながら個々の利用者に対して、言うなれば、オリジナルの移送サービスを提供しています。このきめ細かな準備が利用者やその家族の安心感につながり、事故も防ぐことになります。 高齢者や障害者など何らかのハンディがあっても外出することは必要不可欠であり、権利でもあります。それを実現するには公共交通以外でも交通バリアフリー法の思考を取り入れ、障壁をなくす配慮や支援が必要です。ハンディのない一般の人を前提にした道路運送法では、これからの高齢化社会に対応できません。だれもが行きたい所に安全で自由に出かけられる社会を構築することが急務です。 (上毛新聞 2004年3月26日掲載) |