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◎開示を拒むのは不当 利息制限法という法律がある。貸付金十万円未満は年20%、十万円以上百万円未満は年18%、百万円以上は年15%が金利の上限であり、これを超過する金利は無効とされる。 ところが、サラ金などはこの上限をはるかに超える利息を請求している。だから、サラ金から借金をして、長い間、その請求のままに返済を続けていた人は、この間の貸し借りを法定の上限金利で引き直して計算すると、逆に「払い過ぎ」になっている場合がある。このようなケースでは、払い過ぎたお金(過か払ばらいきん金)の返還をサラ金に請求する。実際に、その返還が認められるケースは数多い。 司法書士が債務整理を受任した場合、過払金の有無を調べ、その返還を求めるため、サラ金業者に対し貸し借りの記録の開示を求める。しかし、この開示に協力的な業者は非常に少ない。中には、ほとんど「屁へ理屈」とも言うべき論理をもって、開示を拒む業者もいる。 例えば、あるサラ金業者は、すでに過払金が生じていると思われる債務者に対しては、司法書士が受任した途端に貸金債権のすべてを放棄する。債権を放棄すれば取引関係がなくなり、取引関係がない以上、記録を開示する必要も根拠もない、という理屈らしい。それによって、過払金の在否をうやむやにし、返還を免れたいという作戦であろう。これは、一部悪徳業者の手口というわけではない。社名を聞けば誰でも知っている大手サラ金業者が、平然と行っていることだ。 このように多くのサラ金業者が、さまざまな理屈を弄ろうして記録の開示を拒む。このような姿勢は法的にも間違っていると言うべきであるが、それ以前に不誠実であり、社会的・経済的倫理に照らしても大きな問題だ。取引先に対して取引記録をひた隠しにしなければならない事業は、まともな事業と言えるであろうか。取引記録をうやむやにすることで守られる利益は、正当な利益と言えるであろうか。 実は、一定の「条件」のもと、上限金利を超える利息の支払いを有効と認める法律(貸金業規制法)もある。サラ金業者はみな、この法律に基づいて営業しているはずだ。そうであるならば、正々堂々と取引記録のすべてを開示し、貸金業規制法に基づき自社の利息請求が有効であることを主張すればよいではないか。確かに、同法が定める「条件」は厳しく、それを満たしているかどうかが裁判上争われる場合には、サラ金業者に不利になることが多い。しかし、その厳しい条件をクリアすることは、サラ金業者に課せられた社会的責任である。その責任を回避する目的のため、取引記録の開示を拒むのは不当であり、許されない。 もし、サラ金業者が現状のまま開示を拒む姿勢を取り続けるならば、やがて社会的な信頼を失い、誰もサラ金業者を「まともな会社」とは見なくなるであろう。 (上毛新聞 2004年3月20日掲載) |