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◎人との触れ合いに感謝 先に述べたとおり、農業は第一次産業の特殊性から生産性は低位にあるが、国民食糧の安定的供給という大命題の下、国土自然環境の保全等、限りない公益的機能を有する産業であるとの自覚を持てば、大いなる自信と勇気がわいてくるのではないでしょうか。一方で工業優先の日本社会となり、高度成長の波で農村社会も豊かになり、近代的な経営改善も多く見られる今日と思います。 以上のような環境にありながらも、専業農家の減少と第一種、第二種兼業化への移行が急速に進みつつあります。それらと併行し、食の安全安心という命題の下、「地産地消」と併せて今後、差別化食品の生産と販売に新たな活路が開けてくると思います。こうした社会の変化に対応していくためには人間として、特に農業人としての意義と価値の確認が必要だと思います。 私は六十年来の農業人としての生活を振り返り、しみじみ思うことは、すべてが大自然の恵みの下、多くの先人先輩のご指導と関係機関の方々との長い触れ合いによって積み上げさせていただいたことを真に受け止めさせていただく今日であります。私自身七十代後半に入り、人生を顧みると、人間は無より有を生ずると教えられてきましたが、今日までの生き方で他人との触れ合いのない日はほとんどありませんでした。日常、農業経営に関することから社会的な諸問題について老若男女のすべての方々より学びの場でふれることによって得る心の糧は実に尊いもので、私の人生を充実あるものに実現させていただいたことは、幸せでいっぱいであります。 一方では今日、国際的にも国内的にも自然環境の汚染というか、各種ウイルスの伝でん播ぱによる動植物の汚染はわれわれ人類にとって、深刻な課題ではないかと思います。私どもには専門的知識がないので理解できませんが、これは人類に対する神の警告と謙虚に受け止めて、人類社会共通の責任として対応していかなければならない課題ではないかと考えます。 最近の高病原性鳥インフルエンザ、牛海綿状脳症(BSE)の問題は、歴史的にも考えられなかった現象ではないかと思います。人類全体の共通課題として受け止め、情報を正しく開示して、お互いに安心して生活ができるよう、力を合わせて進まなければならないことではないかと考えます。私も長く養豚経営者として生きてまいりましたが、自由化の進展が叫ばれている中で、ウイルスの自由化が付いて回る危惧(きぐ)の念をもっておりました。現実の問題として今日、国家的にも社会的にも正面から受けて立たなければならない最重要課題ではないかと考えます。 行政機関、団体においても真剣に取り組んでおられることはマスコミの報道でも理解はできますが、私ども農業者はもちろん、国民全体の問題と考えます。人間としての義務ととらえ、お互いに力を合わせて取り組んでいくべき難題ではないかと思います。 (上毛新聞 2004年3月4日掲載) |