視点 オピニオン21 |
■raijinトップ ■上毛新聞ニュース |
|
|
◎人と人との結いが大切 赤城山小沼に源流を持つ粕川は富士見村、粕川村、宮城村、赤堀町、伊勢崎市を通り、境町で広瀬川に合流するまで全長が約三十三キロあります。その土手を花でつなぎたい、花の植栽を通じて流域の人々の心と心をつなぐネットワークをつくりたいという熱い思いで、一昨年五月、第二期粕川フラワーロードの会が発足しました。 実際、土手を花でつなぐことは壮大かつ無謀な夢で不可能ですが、流域間交流が生まれれば夢に近づくと、わくわくしながら花の道をつくっています。できる人ができる時に、できる場所をできる範囲で活動しようというポリシーは、自然の恩恵を受けながら活動するこの会の基本です。 第一期の始まりは今から三十年ほど前にさかのぼります。私の家の南を流れる粕川の河川敷には当時、コンクリートくず、材木などの廃建材や、割れた空き瓶の入った酒屋のケースなどが平気で捨てられ、川外川内はごみ捨て場と化していました。花を植えればごみの投げ捨ても減るのではと、粕川フラワーロードの先駆者が、そこに数株のカンナの球根を植えたのが始まりでした。 カンナは水くれができない過酷な条件の土手においても、必ず夏には黄色い花を咲かせ、今でも株を増やし続けています。夏にはそのカンナを中心にマーガレット、キバナコスモス、金鶏菊などで土手はにぎわい、特に昨年植えたサルビアの道は素晴らしいものでした。全国で花による環境美化活動が行われていますのも、花は人を和やかな気持ちにさせ、「ごみを捨てるな!」という無言のメッセージを送っているからです。夏の草刈りをはじめ、年間の植栽管理は大変ですが、道行く人々や土手の花から「ありがとう」と言われると、本当にうれしいものです。 さて、私たちが活動する上で特に大切なことが二つあります。一つは粕川の自然景観を守り、土手を守ることです。本来、土手は治水のためにあるわけで、堤防の安全管理は国や県が行っています。ですから、昔から県の土木事務所と相談し、場所や花の種類等の指導を受けながら活動をしています。二つ目は、家庭や地域の領域を勝手に侵害しないことです。土手はみんなの散歩道なのですが、土手沿いの家や草刈りをする自治会等の了解が必要です。特に刈り払い機でする草刈りには花は邪魔な存在となり、刷り合わせの相談をしますが、決して無理はしません。 本県では環境美化活動のアダプト制度がお目見えするようですので、地域コミュニティーの活性化が期待できる地域や、自発的なボランティアが育っている地域には花の植栽管理を任せ、楽しく継続してもらいたいと思っているのですが、はたして花の道づくりは地域づくりのきっかけになるでしょうか。 地方分権が進む中、行政区や学校区等の小さな自治は、環境、防災、教育、福祉、治安回復、子育て、経済等の緊急かつ重要な課題を担い、地域力を発揮する時にきています。人と人との結いが大切な時代です。 (上毛新聞 2004年2月25日掲載) |