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群馬大学教授(地域共同研究センター)須斎 嵩さん(足利市本城)

【略歴】足利市生まれ。早稲田大理工学部卒業後、1969年に三洋電機入社。大連三洋空調機公司董事長、環境システム研究所長などを経て、2002年4月から現職。中国ビジネス研究会世話人。

女性が輝く時代



◎家庭と職業の両立を

 民族間、宗教、資源エネルギー問題などが相克するきな臭い世の中で、精力的に平和活動を進めている国際協力機構理事長の緒方貞子さんは、世界から注目され、さん然たる輝きと気高さが感じられます。また、記者会見の帰り際に捨て台詞(せりふ)を吐いた有名な知事の二世議員大臣に比べ、前の女性大臣の方が迫力、明快さ、胆心があり、魅力を発散していました。

 群馬大学医学部の女性教授の先生方も率先して教育、医療研究、社会貢献、ベンチャー起業などをなされ、女性の知性と感性をいかんなく発揮されています。また、研究会などでお会いする女性の社長や管理職の方は、高い視点で経済や雇用情勢などを語り、自社の経営の状況の話をお聞きすると、高いブランド品を身に付けているかもしれませんが、家庭と職業を両立させている姿は美しく輝き、身のこなしにも優雅さが感じられます。

 恥ずかしながら、わが家を振り返ると、学校に通う息子や娘に弁当を作り、玄関に靴をそろえて「行ってらっしゃい」と見送り、それから薬局の勤務を両立させている妻に頭が上がりません。私はしかり役と家庭教師役のみでしたが、子供たちは母親の背中を見ながら巣立っていったような気がします。

 友人が活動するカンボジア支援でも、多くの女性が衣料、寄付集め、現地の学校造りを義務感などなく、率先して進めています。そして、女性は環境、食品安全、消費者問題などに高い関心を寄せており、社会に多大なる好影響を与えています。

 その半面、いただけないこともあります。アムステルダムの空港内をトレーニング姿で闊歩(かっぽ)されていた日本のご婦人団体と、その後を追いかけて歩くご主人の一行。外食産業に貢献はしているものの、暇を持て余した女性ばかりのレストランのランチ風景、女子の中高生が階段で足を広げ、べたっと座っている姿は決して美しくなく、みすぼらしいと思います。

 米国のみならず、中国でも女性の社会進出が進み、以前、私が関係した中国の公司(会社)でも、女性の経理や資材の部長が、凛(りん)として男性社員を指示、指導していました。わが国の至る所の集まりが男性社会ですが、これからの知識社会では女性の社会進出の機会が多くなります。女性には家庭や育児等の多難があり、単身赴任などの制限があるものの、企業の経営者や管理者、職人、政治家、技術者・研究者などにどんどん参加していただきたいと考えています。

 女性の甘えをなくし、男性が気遣いとしっかりとエスコートをすれば、家庭と職業の両立を可能にして光り輝き、優雅で素敵(すてき)な芯(しん)のある女性が増えていくと思います。社会のリーダーに女性が増えることは、きな臭い戦争などが少なくなります。徳富蘇峰も称した“上州かかあ天下”を真の女性の在り方として、群馬から発信をしてほしいと思います。それ以上に、男性がしっかりしないといけないわけですが。

(上毛新聞 2004年2月17日掲載)