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サカエ農園主 原 俊幸さん(安中市西上秋間)

【略歴】高崎経済大卒。1968年にJA群馬信連に就職、融資や金融法律相談業務などを担当。2001年に退職し農家に。著書に『リストラにあったサラリーマンが書いた不況脱出の処方箋(せん)』。

成果主義型賃金の功罪



◎適正な日本的体系を

 バブル経済が崩壊し今年で十四年目を迎えたが、不況風は一向にやまず、株価の低迷、企業倒産、失業者の増等厳しい環境下にある。

 国は景気立て直しとして、各種経済政策・構造改革等を実施してきているが、回復の足どりは遅い。景気の低迷は家計や企業経営を悪化させるばかりでなく、国家財政を貧困化させ、崩壊の危機にさらす。早期の有効経済政策の発動を望むものである。

 さて、民間企業はデフレという縮小経済の中にあって、より一層の経営の効率化が要求されている。

 合併・事業の提携および統合等は日常茶飯事に行われており、業界の再編成や事業の複合化合理化が進んでいる。併せて、かなりの企業で人件費削減のためリストラ、賃金カット、ボーナスの減額または支給停止、諸手当の廃止等が検討され、実施されている。

 この機に、日本経団連では今年の春闘対応方針として、賃金制度を年功型から成果主義型への全面的転換を発表した。

 成果主義の導入は数年前から各企業団体で導入され、目新しいことではないが、ここにきて経団連が成果主義全面転換を打ち出したことは、大きな意義がある。成果主義とは「働きに応じて給料が上下し、好業績の従業員には高給で報いる」能力給のことである。そして、同主義のツールとして最も一般的なものは「目標管理制度」である。かなりの企業等で導入され検証されているが、「職場の連帯感が失われる」「短期的な成果だけを追い、本質的な生産性の向上を見失う」「部下や後輩の育成が軽視される」「失敗を恐れ、高い目標に挑戦しなくなる」等の問題点が指摘されている。

 この種の賃金制度が企業団体等に全面的に導入され、実施された場合には、労働者の賃金格差はもとより国民の貧富の差へとつながり、社会経済の構造変革が生じ、不況からの離脱は困難となろう。

 成果主義の導入は一面「是」とするものがあり、否定することはできないが、全面的には認証しがたい。

 ここで年功型賃金を再検証すると、年功賃金は年齢層の高い会社では、賃金が高止まりし硬直化する、また、若年層は有能者であっても賃金が低い等の欠点がある。半面、組織内での結合力、人間関係、安定した給料等の利点もある。年功給は終身雇用制の根幹となっており、企業はよほどのことがない限り、労働者に生活できる給与を保障し、雇い続ける。

 また、この制度は年をとれば全員が必ず高給取りとなれるシステムとなっていない。労働者業績主義の基準のもとに賃金が適用され、責任ある部署にも登用するシステムでもあり、能力主義そのものといえる。

 現在、成果主義による賃金がベターとしてクローズアップされているが、年功賃金も見捨てたものでない。この賃金制度がデフレ経済に根本的になにゆえ適合しないのか疑問を感ずる。

 年功賃金の根幹を維持し、成果主義を加味し、適正な日本的賃金体系を構築することが、喫緊の課題である。それは企業の活性化、労働者の生活安定、社会経済の安定や発展につながる。

(上毛新聞 2004年2月16日掲載)