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◎行政に頼り切らないで 今シーズンも本格的な冬に突入した。市街地などでは積雪こそさほどではないにしても十分寒く、また山間部での積雪は多い。いつもは全面オープンとはいかないスキー場も、今年ばかりは違うようである。スキーを含め観光が重要な産業の一つである群馬県などにとっては、申し分のない天候であろう。多分、スキーの入り込み客は例年になく多い結果となるに違いない。 かつてと異なり新幹線などもあるが、スキー場へのアクセスは圧倒的にバスや自家用車が多い。県内のスキー場に行く場合はもちろん、首都圏から新潟や長野のスキー場に行く場合もかならず群馬県内の道路を利用することになる。したがって、日常の生活はもとより、観光振興という面でも冬季の道路交通の確保、つまり除雪や融雪は大変重要な問題となる。 豪雪地帯に住んでいる人々にとっては、除雪・融雪ということは普段の生活の一部であり、いや応なく身近な存在となる。雪を溶かすため、道路から噴水のように水が出てくる消雪パイプ、頻繁に道路にまかれる塩化ナトリウム、つまり塩。積もった雪を道路脇に押し寄せるための、雪用のブルドーザーともいえるグレーダー。寄せられた雪を道路の外にはき出すためのロータリー車。 こうした建設機械や施設、また除雪作業の様子は、県内に住んでいる場合にはあまり目にすることはない。日夜、関係者が待機し、降雪時には直ちに出動できるよう準備していることを知る由もない。そうなると、積雪地帯であっても道路の部分だけは放っておいても雪は積もらないものだ、と錯覚してしまうことにもなりかねない。どこでも、蛇口をひねれば水があり、コンセントにプラグを刺せば電気が使える、ということと同じ感覚である。 どういった分野でも、いろいろな人々が地道に取り組み、いまの状態がなんとか維持されているのである。こういった現実を知っておくことは大切なことであると思う。知らないということは誤解にもつながる。誤解により大切なものを失うこともある。高崎河川国道事務所では、新治村と長野県軽井沢町の二カ所にある除雪ステーションにおいて、毎年初冬、近隣の小学生に除雪機械の体験乗車の機会を提供している。夏には新治村でイベントに合わせ除雪機械の展示を行った。ラジオ番組でも雪対策を紹介している。 こういった地道な取り組みを進めていくと、その先には「知る」から「参加する」「分担する」ということも出てくるだろう。かつて、昭和四十年ごろに今の三国峠が整備された当初は、行政が除雪にまで手が回らず、苗場のスキー場が除雪作業を行っていたとのことだ。行政に頼り切るのではなく、できることは自ら行う。行政は地域の人々ができない領域に責任をもって対応する。さまざまな分野での行政と地域とのパートナーシップの構築が、再び求められつつある。 (上毛新聞 2004年2月13日掲載) |