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◎高度技術で生き残りを 景気や産業などの経済予測に比べて、人口予測ははるかに正確である。日本の十五―六十四歳のいわゆる労働人口は数年前にピークを打ち、すでに減少期に入っている。総人口も三年後より減少を始めるという。このままだと二〇五〇年には一億人に、百年後には現在の半分の人口になるようだ。 人口が減少すれば、大学への全入学が可能となり、交通混雑は解消し土地価格も下がって、都会でも戸建住宅に容易に手が届く。環境問題の主たる元凶は人間であるから、環境負荷も大いに減る。恐らく日本においても、きれいな水と空気のもと、今の欧州並の豊かな気持ちを味わえる生活環境を迎えることとなろう。しかし、これは人口が減少しても、産業活動が現状を維持できて、国民の所得が確保されることを前提とした仮定での話である。 言うまでもなく、日本の富の大半は製造業で生れている。九〇年ごろに比較して、日本の製造業の従事者は、この十数年で35%から25%に減少している。不景気で製造業のリストラが起こり、サービス業など第三次産業へ移行したのである。しかし、就業者数は減少しても、製造業の出荷額は逆に増加している。この間に卸売物価は低下しているので、製造業は実質的に多くの仕事を効率よくこなしたことになる。 昔はどこの国でも産業人口の大半は農業であった。今や先進工業国では数%の農業従事者でその国の食糧は十分に賄える。高度に工業化した国なら、製造業も国内需要を賄うだけなら就労人口は20%でも十分であろう。それどころか、純粋に生産活動だけに限れば、それこそ15%でも足るはずである。 しかし日本の製造業は、もはや量産品製造では生き残れない。日本の製造業は新製品開発や新技術開発、その製造システムの確立、さらに高度技術・技能を要する製品製造に特化せざるを得ない。これらの仕事は、多くの人材を要する労働集約的産業とも言える。しかも、この仕事に携わる人材は、十分に教育や訓練を受けた有能な人材でなければならない。このような人材を賄えないとすれば、製造業が日本で生き残ることは難しい。 人材確保には少子化の影響は無視できない。子供たちは生活環境が良すぎて甘やかされて育ち、競争心やハングリー精神に欠けるひ弱な人間が育つ。そのような子供の教育や訓練はだんだんと難しくなっている。若者の無気力な行動や、最近の企業における人災事故さえも少子化と無縁とは思えない。さらに優秀な人材は、限られた人数しか存在しない。その数は明らかに人口に比例する。子供の出生数は以前の半分以下となっている。優秀な人材確保の対策として、そろそろ海外からの移民を認める必要も議論され始めている。 このまま推移すると、肝心の製造業の開発基地を海外に求めるといったことにも繋(つな)がりかねない。量産も開発も海外でとなれば、日本のモノづくりは弱体化し、いずれは消滅する方向にいく。日本が高度技術の開発基地として生き残ることだけは、我々(われわれ)は何としてでも死守しなければならない。 (上毛新聞 2004年2月3日掲載) |