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◎人をつくり成長させる 動物は無垢(むく)で生まれ、あらゆるものとの出会いにより、吸収しながら成長します。これに対し、人間は知性と教養を持ち、さらに道具を使いますので心配の種もありますが、誠に面白い生き物です。喜び、怒り、哀(かな)しみ、楽しみ、まさに喜怒哀楽の人生を送れるからです。 まず、自然界との出会いがあります。「生きる喜びを与えてくれる新緑、安らぎを覚える広葉樹林、厳しさを教える冬山」などです。出会いの時の心身の状態で感じ方は違いますが、必ず何かを得ると思います。 次に、生き物との出会いです。感受性の強い幼年期は、虫や鳥や動物に接し、さらに大勢の人間と接して成長します。初めて見た時、接した時のしぐさや笑顔は何とも言い難いものです。 一番影響力のあるのは、人との出会いです。すべてが素晴らしい出会いとは限りません。後退したり、右、左へと道草しながら成長していきます。反抗時期は、本人はもとより周囲は大変だと思いますが、将来への素晴らしい経験です。「しあわせは歩いてこない だから歩いてゆくんだね…」と〈三六五歩のマーチ〉でも歌ってみてはいかがですか。何か感じることがあるかと思います。 中学生との雑談の中での話です。「好きな先生は学校にいますか」「ううん…」。返事が返ってきません。心を許せる先生がいないのか、話せないのか分かりませんが、何か一抹の寂しさを感じました。 師としての志を持ち、教職の現場に飛び込んでいる先生がほとんどだと思います。学校は将来、社会人となるための基礎知識を習得する場所だけではありません。生きる楽しさ、厳しさなども教える場所です。 生徒が一番長く過ごす学校現場の役割は、計り知れないものがあります。教師は少し踏み込んで、気楽に何でも話せる時間を設け、会話のキャッチボールをしてみたらどうでしょう。必ず何か得るものがあり、子供たちは心を開いてくれるのではないでしょうか。その延長で好きな先生ができ、何でも話せる友達ができるのだと思います。 これは実際にあった話です。「学校生活はつまらない。何でも一方通行で、生徒の話を聞いてくれない。目的、目標もなく惰性で通学していました」。そのようなことを話していた生徒が学年がかわり、クラス担任が代わったことで変化が表れ、目標を持って勉強に励み、楽しい学校生活を送ったそうです。素晴らしい出会いこそ、人をつくり、人を成長させます。 人生には、千差万別な出会いがあります。素晴らしい出会いを大切にして、「春を愛する人は心清き人 すみれの花のような ぼくの友達…」と〈四季の歌〉でも口ずさみ、人生を過ごしたいものです。 (上毛新聞 2004年2月2日掲載) |