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◎タウトの夢の続き担う 群馬の文化振興と人材育成プロジェクトの一環として、「ブルーノ・タウトの会」を立ち上げ、多くの方々のご支援を得て、遺品の収集、顕彰、テレビ番組の制作、記念館の建設等々、その実現に取り組んでいる。 ブルーノ・タウトは、一九三三年五月、ドイツから来日し、三四年八月に来県、同年十二月十日、寄寓(きぐう)した少林山達磨寺で「少林山建築工芸学校」の開学構想をまとめた。しかし夢は実現せず、大学教授として赴任したトルコで、三八年十二月二十四日、五十八歳の若さで客死した。 そこで、この偉人の遺志を、彼が愛した高崎の観音山丘陵に実現しようと計画を温めていたところ、タウトと同じ高邁(こうまい)な精神で、芸術短期大学を高崎に誕生させ、爾来(じらい)、地域の文化振興と創造性豊かな人材育成を続けている慧眼(けいがん)の学園主との出会いがあり、学園創立四十周年記念のプロジェクトとして、この地方都市から世界に向かって、日本の美と文化を知らしめたタウトを顕彰し、同時に創造性豊かな人材を世に送り出す、芸術と福祉が融合したユニークな大学(創造学園大学)を、タウト来県七十周年にあたる今年の四月に開学させる案が決定。申請は昨年十一月に文部科学省より認可され、本紙第一面でも取り上げていただき、いまもたくさんの受験問い合わせが殺到している。タウトの開学構想より、ちょうど七十年目の春、開花である。 もう一つは、一九三四年、タウトは群馬県庁より地方工芸品制作の顧問を嘱託する辞令を受け、続いて三六年には群馬県工芸所の嘱託となり、県下の工芸品の試作・製品化の指導にあたる一方、高崎の実業家、故井上房一郎氏の支援を得て、東京・銀座に「ミラテス」という名の直売所を開設。製品の販売を試みたが、これも志なかばにして高崎を去った。 その日から二十余年の歳月が流れ、井上氏の指導でこの道に進んだ筆者が、群馬の工芸品や物産を改良指導するマーケティングアドバイザー役を拝命し、タウトが群馬でやり残した仕事の一部、夢の続きを担うこととなった。これも誠に不思議なめぐり合わせだ。 当時タウトが指導したのはデザインの啓蒙(けいもう)や工芸運動で、「いかもの」でないグッドデザインの育成だったが、いまの時代に求められているのは、製品づくりではなく商品づくり。ヒット商品やブーム、人の集まる催事や人気施設等々、それらのプランはカタチを描く前に、ターゲットたる人々の心、それも本人さえも気づかない心の奥底の欲望や感情をキャッチする深層心理学のマーケティング(タウトが国を追われた後、同国で研究された)の活用が不可欠だ。主義主張や造形だけで夢の続きはかなえられない。モノ不足など知らないモノ余りのこの時代、月には手が届いても、人の心ははるかに遠く深遠で、おぼろおぼろの霧の中、一筋縄でないから面白い。換骨奪胎、群馬の名品づくり、既に幾つか誕生し、夢の続きは好評嘖々(さくさく)乞(こ)うご期待。 (上毛新聞 2004年1月29日掲載) |