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◎先人の考え方を学ぼう わが国は、多くの先人たちの努力によって半世紀以上の長い平和と物質的豊かさを誇ることのできる国になりました。もちろん、その半面には精神的・文化的価値を見失わない、功利的価値観や単純な正義感、時には虚構の世界などからバラ色の将来を夢み続け、人間としての在り方や生き方を勘違いしてきた感があります。その結果、青少年の問題をはじめ社会全体に大きな今日的課題を残しています。 その中でも、これからの社会を担う青少年の金銭・物質感覚やそれに伴う行為の現状を憂うのは私だけではないと思います。これは誕生した時から物質的豊かさと科学文明の恩恵に浴し、日本人の美徳とされた勤勉・質素・倹約・我慢・忍耐などの「心」を捨ててしまったこと、貧困から豊かな生活への願望のみを目指してきたこと、「大きいことはいいことだ。消費は美徳で王様だ」などとの商業主義の宣伝に乗せられてきたこと、金銭の大切さ、収入と使途の正しい在り方の教育が十分ではなかったこと、さらには人間の倣ごうまん慢さとうぬぼれなどがあったことのように思います。 大きな領土を手に入れ、大国となって長期間繁栄を続けてきた帝国が、滅亡した最大の原因が物質的豊かさの中で高い生活レベルを享受し、享楽にふけり、さらにそれらを追い求めてモラルを低下させ、勤労や教育を軽視し、軽薄な思考を蔓まん延えんさせ、自分の国を愛し守る気概さえも捨てたことにあることを、私たちは世界史上から学ぶべきです。 現在、学校教育では校内にミニ銀行を設立して貯蓄や金銭の出し入れの実践、教科の中で国や自治体の予算などのかかわりで経済上の基礎知識や消費者としての心がまえ、「税を知る週間」に合わせて税制や税金について学ぶなどの金銭教育を実施しています。 しかしこれらは、公的な経済活動を中心にしたもので、個人が金銭を得るモラルや自分のことと同時に、他人や社会にも貢献する使途観の育成というより突っ込んだ金銭教育が求められていると思います。これらを具体的に子どもたちに理解させるには、先人の思想や実践を取り上げるのがよいと考えています。例えば、二宮金次郎(尊徳)の教えや功績を、今日的経済環境に合わせた形で教えることです。戦前に国家イデオロギーを国民に植え付けたシンボルだ、時代錯誤だ、科学的ではないなどと短絡的に考えず、また「食わず嫌い」にならずに、その人物の生き方や考え方を学び教訓とすべきだと思います。 残念なことに、国の大綱的学習基準である小学校の学習指導要領では四十二人の人物例をあげ、人物の働きや代表的な文化遺産を学ぶことになっておりますが、この中には尊徳も塩原太助も入っておりません。尊徳の教える経済道徳一元論や勤労・分度・推譲などの考え方は、今日も立派に活用できると思います。英国病を克服し、国の威信を回復したサッチャー元英国首相の物の見方、考え方が、尊徳のそれと同一であったといわれています。 (上毛新聞 2004年1月25日掲載) |