視点 オピニオン21
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写真家 大橋 俊夫さん(埼玉県川口市)

【略歴】高崎市生まれ。高崎高、日大芸術学部写真学科卒。講談社入社後、『FRIDAY』副編集長などを経て退職。日本雑誌写真記者会賞など受賞。昨年、写真集『尾瀬―空・水・光』を出版。

アテネ五輪



◎いかにスリム化するか

 一九九六年はオリンピックが開催されてから百年という区切りの年でした。そのこともあって百年目には近代オリンピック発祥の地であるギリシャのアテネでの開催が望まれていました。しかし、名乗りを上げていたものの、アテネでは金にならないと敬遠され、アメリカのアトランタに決まりました。

 今やオリンピックは肥大化し、その運営はテレビマネーとスポンサーに支えられているのが現状です。特にアメリカのテレビのゴールデンタイムにスケジュールが組み込まれ、プールをはじめ、スピードスケートのオーバルコース(四百メートル)等も天候に左右されないよう室内になりました。

 本来スポーツは陽光を浴びながら、すがすがしい空気のもとで行ってこそ心身ともにリフレッシュされると思いますが、アスリートたちは、スケジュール優先で人間の休憩時間にハードな競技を行わなければなりません。

 東京五輪から今年は四十周年にあたります。当時の参加国は九十四カ国でしたが、二○○○年のシドニーではますます肥大化して二百カ国に、今年のアテネ五輪ではそれ以上の参加国となるでしょう。

 ちなみに一八九六年の最初の近代五輪アテネ大会では、欧米十四カ国が参加、選手は男子のみで二百九十五人でした。競技は陸上、水泳、体操、フェンシング、射撃、レスリング、自転車、テニスの八競技。陸上競技のトラックは一周三百三十三メートルで直線が極端に長いため、急カーブで「ヘアピンカーブ」といわれ、しかも現在の左回りではなく右回りだったようです。

 今年のアテネ五輪は八月十三日から二十九日まで十七日間にわたって開かれます。参加選手、役員、報道関係者、観客を含めれば、何十万人の人々が訪れるわけですから、当然ホテルが不足します。長野の冬季五輪でも一時的需要に応じるため、ホテルが急造されました。その結果、五輪終了と同時にその多くが経営難に陥り、バタバタと倒産の憂き目にあってしまいました。

 このため、アテネではホテル不足を解消するため、世界各国の豪華客船を港に係留し、宿泊に流用する案が浮上、実行される予定です。すでにいくつかの国から予約が入っているようです。

 また、アテネの都心から十キロ近く離れたアルーシ地区を主会場にするため、大改装中だそうです。

 しかし歴史や埋蔵遺跡を守ろうといった反対派の反発や、莫ばく大だいな経費を要することから工事が順調に進んでいるとは言えないというところもあり、施設の完成が危ぶまれているところもあるとか…。

 五輪は一九九二年まで、夏季、冬季ともに同年に開催されていましたが、九四年から冬季五輪が変則的になりました。世界的な不況で四年ごとに二つの大会のためにスポンサーからビッグマネーを集めることが難しくなったのでしょう。国際オリンピック委員会(IOC)事務局も、一年間に二つの五輪を開催する事務的負担に耐えきれなくなってきたのではないかと思います。

 五輪をいかにスリム化するかは大問題であると思います。

(上毛新聞 2004年1月21日掲載)